| 読了時間:約5分
バンドで最初に限界を迎えるのは、いつもドラマーだ。
あるロックバンドのドラマーが、心身の不調を理由に休養することになった。
バンド側は「本人が療養に専念できるように」という趣旨の声明を出した。
復帰の見通しは、今のところ立っていない。
突然の知らせにファンが戸惑うのは当然だ。
だが音楽業界を少し知る人間なら、「またドラマーか」と感じたかもしれない。
なぜ、ドラマーは繰り返し倒れるのか。
その答えは、本人の「弱さ」にではなく、ドラマーというポジションが持つ「構造」にある。
この記事でわかること

突然の休養発表、その中身は
「 本人が療養に専念できるように 」——バンドが選んだ言葉は、ファンへの配慮より本人保護を優先した。
バンド側がこうした言葉を公式に発するのは、珍しいことではなくなってきた。
かつての芸能界なら「体調不良」の一言で済ませることが多かった。
それが今は、「 本人のために 」という主語が前に出る。
所属バンドや事務所が、メンバー個人の健康を最優先にする姿勢をとるようになったのだろう。
今回のケースでは、復帰の時期は 「未定」 とされた。
「当面の間」でも「数週間」でもなく、「未定」だ。
この言葉の重さについては、後で改めて触れる。
広告
ではそもそも、「心身」という 2 文字には、どんな意味が込められているのだろうか。
「心身」という2文字が示すもの
「体調不良」と書けばいいのに、あえて「心身」を選ぶ——その一語に、 今の芸能界の変化 がにじんでいる。
「心身」とは、体と心の 両方 を指す言葉だ。
これが「体調不良」や「病気」と違うのは、精神的な側面を含むことを明示している点にある。
芸能界では近年、 うつ病 (気持ちが長期間落ち込んだ状態)や 適応障害 (強いストレスで日常生活に支障が出る状態)を直接公表せず、「心身の不調」という表現で包括的に伝えるケースが増えてきた。
「心身不調」という表現
体と心の両面の不具合を一語で指す言葉。
芸能界では精神疾患を直接公表せず、本人のプライバシーを守りながら精神面の休養が必要だと間接的に伝える際に使われることが増えている。
オリコンニュース が伝えたROTTENGRAFFTYの事例でも、バンド側は「ファンの皆様、ならびに関係者の皆様にはご心配をおかけしますが」と本人を気遣う姿勢を前面に出している。
アーティストのメンタルヘルス(心の健康)を守ることを重視する動きが、業界全体に広がってきた証だ。
広告
では、そもそもなぜドラマーは、心身の両面で不調を抱えやすいのか。
バンドの中でドラマーだけが背負う、ある特殊な重さがある。
ドラマーはなぜいちばん消耗するのか
腕・肩・背中・腰・足、 全身を同時に動かし続けながら 、バンド全体のリズムを一人で支える。
ドラムは全楽器のなかで、身体への負荷が特に大きいとされている。
しかもドラマーは、 演奏中に一瞬も止まれない 。
ボーカルは息継ぎができる。
ギタリストは間奏で動きを減らせる。
だがドラマーがリズムを崩した瞬間、バンド全体が崩れる。
ここに、心理学・スポーツ医学で知られる「 バーンアウト(燃え尽き)症候群 」の発生しやすい条件が重なる。
バーンアウト症候群とは、慢性的な過負荷が続いたときに心身が機能しなくなる状態だ。
この状態は 3 つの条件が揃うと特に起きやすいとされている。
- 高い責任感
- 代わりがきかない役割
- 孤立した立場
- 全員のリズムを支える
- 演奏中に止まれない
- 一人でリズムを担う
つまり「ドラマーが倒れた」という出来事は、 個人の気合や根性の問題ではない 可能性がある。
バンドという組織の設計上、最も消耗を集中させられやすいのがドラマーだという構造的な話だ。
ドラマーが倒れるのは気合不足じゃなくて、バンドで唯一「止まれない係」だから燃え尽きやすい構造になっているのだろう。
「なんでドラマーが? ボーカルじゃないの?」と思っていたとしたら、ここに答えがある。
こうした消耗が、 2026 年だけで何度も現実になっている。
今年を振り返ると、ある不穏な流れが見えてくる。
広告
2026年、相次ぐドラマーの離脱
1 月、 4 月、そして今回—— 2026年、ロックバンドのドラマーが次々と舞台を離れた 。
オリコンニュース によると、2026年1月、ロックバンド ROTTENGRAFFTY のドラマー・ HIROSHI が活動休止を発表した。
理由はアルコール依存症と、肘の慢性的な痛みだった。
「長期にわたる治療およびリハビリが必要という判断に至りました」と、バンドは公式サイトで説明している。
音楽ナタリー によると、 UNISON SQUARE GARDEN のドラマー・ 鈴木貴雄 は7月のライブを最後に脱退し、バンドも現体制の活動を終了して活動を休止する。
さらに 日刊スポーツ によると、 BabyKingdom のドラマー・ 虎丸 も持病の悪化を理由に脱退を発表している。
これだけ短期間に ドラマーが複数離脱する のは、単なる偶然とは言いにくい。
それぞれの事情は異なるが、「ドラマーに過負荷が集中しやすい」という構造がその背景にある可能性はあるだろう。
広告
ではファンが最も気になる問いに移ろう。
ドラマーが抜けた今、バンドはこれからどうなるのか。
バンドの活動はこれからどうなる
ドラマーが抜けても、 バンドが止まるとは限らない ——業界には、その穴を埋める仕組みが存在する。
「 サポートドラマー 」という役割だ。
正規メンバーに代わり、一時的にドラムを担当するミュージシャンをバンドに迎える形式で、活動を継続するやり方がある。
オリコンニュース が伝えたROTTENGRAFFTYの事例では、バンドが「 サポートドラマーを迎え、歩みを止めることなく継続してまいります 」と公式発表した。
ドラマーが休養中でも、バンドとしての活動が止まらなかった先行例だ。
- ライブが予定通り開催される可能性がある
- チケットはそのまま有効なケースが多い
- ライブ中止・延期の可能性もある
- バンドの公式サイトで最新情報を確認する
広告
ただ気になるのは、本人がいつ戻れるかだ。
「復帰時期未定」という言葉は、何を意味するのか。
休養したアーティストが戻る日
「 復帰時期は未定 」——この 4 文字ほど、ファンにとって切ない言葉もない。
でも「未定」は「戻らない」ではない。
心身の不調からの回復には、個人差が大きい。
数週間で復帰したケースもあれば、数年単位になったケースもある。
とりわけ 精神的な要因が絡む場合 、無理な復帰がかえって悪化につながることもあるとされる。
「未定」という言葉は、今この時点での正直な答えだ。
見通しが立てられるほど回復していない、という状態を誠実に伝えている。
⚠ 「未定」を「見込みなし」と読み違えない。
回復のペースは本人にしか分からない。
外から急かすことが、回復を遅らせる要因になりうる。
近年の芸能界では、アーティストのメンタルヘルスを守るために「 急かさない 」姿勢が広がってきた。
回復のペースは本人にしか分からない。
ファンとして今できることは、応援の気持ちを押しつけず、「待っている」と静かに伝えることだけかもしれない。
広告
倒れたのは気合が足りなかったからではなく、バンドの中でいちばん消耗が集中するポジションを担い続けてきたからだ——そのことを知った上で「お大事に」と言うのと、何も知らずに言うのとでは、言葉の重さが変わる。
まとめ
- バンドのドラマーが心身の不調を理由に休養を発表した。復帰時期は「未定」とされ、バンド側は「本人が療養に専念できるように」という姿勢を示した。
- 「心身」という言葉は精神的な側面も含む表現で、近年の芸能界でメンタルヘルスへの配慮を示す言葉として定着しつつある。
- ドラマーは全身を使い続け、演奏中に止まれない唯一のポジションだ。「高い責任感・代わりがきかない・孤立した役割」という3条件が重なり、燃え尽き症候群が起きやすい構造にある。
- 2026年はROTTENGRAFFTY、UNISON SQUARE GARDENなど、複数のロックバンドでドラマーの休止・脱退が相次いだ。偶然ではなく、構造的な問題が背景にある可能性がある。
- ドラマーが休養中でも、サポートドラマーを迎えて活動を続けるバンドは多い。ライブの開催有無は公式発表を確認するのが確実だ。
よくある質問(FAQ)
Q1. ドラマーが心身不調で休養する理由は何ですか?
ドラマーは全身を使い続け、演奏中に止まれない唯一のポジションです。
高い責任感・代替不可・孤立した役割が重なり、燃え尽き症候群が起きやすい構造にあるとされています。
Q2. 「心身不調」と「体調不良」はどう違うのですか?
「心身」は体と心の両方を指す言葉です。
精神的な側面(うつ・適応障害など)も含むことを示す表現で、芸能界でプライバシーを守りながら精神面の休養を伝える際に使われることが増えています。
Q3. ドラマーが休養中、バンドの活動はどうなりますか?
サポートドラマー(一時的に代わりを務めるミュージシャン)を迎えて活動を続けるバンドは多いです。
ライブの開催有無は公式発表で確認するのが確実です。
Q4. 心身不調からの復帰にはどれくらいかかりますか?
個人差が大きく、数週間で戻れるケースも数年かかるケースもあります。
精神的な要因が絡む場合は特に時間がかかることが多く、外部から復帰時期を予測するのは難しいとされています。
Q5. 2026年にドラマーの休止・脱退が多い理由は何ですか?
ROTTENGRAFFTYのHIROSHI(1月)、UNISON SQUARE GARDENの鈴木貴雄(4月)など複数の事例が相次ぎました。
偶然ではなく、ドラマーというポジションに消耗が集中しやすい構造的な背景がある可能性があるとされています。
Q6. バーンアウト症候群とは何ですか?
慢性的な過負荷が続いたときに心身が機能しなくなる状態です。
高い責任感・代替不可能な役割・孤立した立場が揃うと特に起きやすいとされ、ドラマーはこの3条件を備えやすいポジションだといわれています。
Q7. ドラマーが倒れてもバンドは解散しないのですか?
多くの場合、解散せずにサポートドラマーを迎えて継続します。
ROTTENGRAFFTYも「サポートドラマーを迎え、歩みを止めることなく継続」と公式発表しました。
📚 参考文献
リアルタイムニュースNAVI 編集部
reaitimenews.com
話題のニュースを「なぜ?」の視点で深掘りするニュースメディアです。法律・心理学・経済など専門分野の知識をもとに、報道だけではわからない背景や理由をわかりやすく解説しています。
広告