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静清信用金庫の30代職員が、約15ヶ月で1億8200万円を着服していた。
手口は「金利の高い定期預金への切り替え」を装うものだった。
発覚のきっかけは、犯人自身の申告だ。
なぜこれほどの巨額を着服できたのか。
そして犯人はなぜ自ら名乗り出たのか。
事件の全容を読み解いていく。
この記事でわかること
月1400万円ペースの異常な着服——30代渉外係はどうやって1億8200万円を抜き取ったのか
静清信用金庫の30代男性営業担当職員は、「金利の高い定期預金に切り替える」という嘘の説明で顧客から現金を預かり、わずか約15ヶ月で累計1億8200万円を着服していた。
📄 公式発表の概要
静清信用金庫の公式発表によると、着服を行ったのは営業担当の30代男性職員。
発生期間は2024年10月から2026年1月。
累計事故金額は1億8200万円にのぼる。
金融機関の着服事件は、何年もかけて少しずつ積み上げるイメージが強い。
実際、過去の信用金庫着服事件では10年以上にわたって不正を続けたケースもある。
ところが今回の犯行期間は約15ヶ月だ。
何年もかけてコツコツ着服 → 月平均に換算すると約1400万円。
サラリーマンの平均年収に近い額を、毎月着服していた計算になる。
「金利の高い定期預金に切り替えましょう」
静岡朝日テレビの報道によると、手口はこうだ。
① 顧客に「金利の高い定期預金に切り替える」と嘘の説明をする
② 定期預金を解約させたり、普通預金から現金を引き出させる
③ 受け取った現金を金庫に入金せず、そのまま着服する
渉外係とは、銀行や信金で外回りの営業をする職員のことだ。
顧客の自宅や勤務先を一人で訪問し、現金を直接受け取る場面が多い。
つまり、顧客と金庫の間に渉外係が一人で立っている。
この構造こそが、着服を可能にした背景だろう。
SBS静岡放送の報道では、被害にあったのは個人・法人あわせて13の顧客と伝えられている。
着服した金は「競馬や競艇、ローンの返済にあてていた」と本人が述べている。
なぜ約15ヶ月もバレなかったのか
金融情報システムセンター(FISC)の資料は、金融機関の着服手口の典型を次のように説明している。
「一般に公開していない、特別に利率の良い金融商品があります」——こう嘘をつき、顧客から直接お金を預かる手口が多い。
今回の手口はまさにこの典型だ。
顧客は信頼する金庫職員の言葉を信じ、現金を手渡す。
通帳に記載のない「特別な商品」という説明があれば、残高を確認しても違和感に気づきにくい。
⚠ 着服が見つかりにくい構造
FISC資料はこの構造を「一人で作業が完結する、記録が残らない、誰もチェックしない」と指摘している。
渉外係は一人で完結する業務が多く、上司や同僚のチェックが入りにくい。
これほどの大金を着服しながら、発覚のきっかけは内部監査でも顧客の苦情でもなかった。
犯人自身が名乗り出たのだ。
「これ以上は続けられない」——自ら名乗り出た犯人と6500万円の返却
2026年1月27日、犯人が本部に対し「報告しなければならないことがある。お金を着服してしまった」と自ら申告した。
金融機関の着服事件で、犯人が自分から名乗り出るのは異例だ。
SBS静岡放送の報道では、本人が「着服が高額になり、これ以上は続けられないと思った」と話している。
月1400万円ペースで膨らむ金額に、自分自身が耐えきれなくなった——そういう状況だったのではないか。
1億8200万円のうち6500万円は返却されていた
ここで注目したいのが、公式発表に記された2つの数字だ。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 累計事故金額(着服した総額) | 1億8200万円 |
| 実質事故金額(実際の被害額) | 1億1700万円 |
| 差額(本人返却分) | 6500万円 |
累計1億8200万円のうち、6500万円は本人がすでに返却していた。
この差額の意味は大きい。
ギャンブルで一時的に勝った分を戻していた、あるいは発覚を遅らせるための「自転車操業」だった——どちらの見方もできるだろう。
ただ確実なのは、着服と返却を繰り返す中で金額がどんどん膨らみ、コントロールを失ったということだ。
✅ 被害者への弁済状況
公式発表によると、被害を受けた顧客には静清信用金庫が全額を弁済済み。
監督官庁への報告と警察への相談も行っている。
外部有識者を含む「不祥事件調査対策委員会」を立ち上げ、再発防止に取り組むとしている。
犯人の男性職員は現在、業務を離れて本部の聞き取りに応じている。
では、この職員は今後どのような処分を受けるのか。
逮捕・実刑はほぼ確実か——業務上横領の量刑相場と「9連休ルール」の盲点
全額弁済されたなら許されるのでは——そう思うかもしれない。
しかし、1億円を超える横領では実刑がほぼ避けられない。
業務上横領罪の量刑はどのくらいか
業務上横領罪の法定刑は「10年以下の懲役」だ。
罰金刑がなく、起訴されれば懲役刑が求刑される。
弁護士法人の解説によると、過去の判例では以下のような量刑が出ている。
| 横領額 | 懲役 | 概要 |
|---|---|---|
| 8000万円 | 6年 | ネットバンキング悪用 |
| 1億6500万円 | 7年 | 学校理事長の長期横領 |
また別の弁護士サイトでは、「被害弁償をしていない横領額が3000万円〜1億円の場合は4〜5年の実刑」としている。
全額弁済でも刑罰は軽くなるのか
⚠️ ここからは推測です
以下は報道された事実と法律知識に基づく分析であり、確定した情報ではありません。
静清信用金庫が被害者に全額弁済しており、この点は量刑を左右する要素になるだろう。
ただし、弁済は金庫が行ったものであり、犯人本人からの弁済ではない。
1億8200万円という金額の大きさ、計画的な犯行、約15ヶ月で13件という反復性を踏まえると、執行猶予がつく水準ではないと見るのが自然だ。
公式発表で「所轄の警察署にも相談いたしております」と記されており、刑事事件として立件される方向で進んでいるのではないか。
2026年2月28日時点で逮捕の報道はまだない。
なぜ金融機関の着服は繰り返されるのか
FISC資料では、内部不正は3つの要素がそろったときに起きるとしている。
| 要素 | 今回のケースへの当てはめ |
|---|---|
| 動機 | ギャンブル依存(競馬・競艇)+ローン返済 |
| 機会 | 渉外係の一人完結業務。現金を直接受け取れる構造 |
| 正当化 | 「一時的に借りるだけ」「すぐ返せる」という心理(推測) |
金融業界では2005年以降、着服防止策として9連休取得のルールが広まった。
担当者が長期間不在になれば、顧客が「私の預金はどうなっている?」と別の職員に尋ね、着服が発覚しやすくなる。
人事異動による担当者のローテーションも、長期的な不正を防ぐ定番の対策だ。
⚠ 短期集中型の着服には対策が効きにくい
今回の犯行は約15ヶ月。
人事異動のサイクルが回る前に発覚した。
逆に言えば、短期間に集中して大金を着服する手口には、これらの対策が効きにくい構造的な盲点がある。
あなたが普段やり取りしている銀行や信金の営業担当が、もし同じことをしたら気づけるだろうか。
「金利の高い商品に切り替えましょう」と言われたとき、通帳と証書を自分で確認する習慣が、最後の防衛線になる。
まとめ
| 犯人 | 30代男性の営業担当職員(名前は非公表) |
| 着服額 | 累計1億8200万円(実質1億1700万円) |
| 期間 | 2024年10月〜2026年1月(約15ヶ月) |
| 手口 | 定期預金切替の虚偽説明で現金を着服 |
| 使途 | 競馬・競艇・ローン返済 |
| 発覚 | 2026年1月27日、本人の申告 |
| 弁済 | 金庫が被害者に全額弁済済み |
| 現在 | 警察に相談中、逮捕の報道はまだなし |
犯人の名前は2026年2月28日時点で公表されていない。
通帳や定期預金の証書は、営業担当に任せきりにせず自分でも確認する。
これが金融機関の着服から身を守る基本になる。
よくある質問(FAQ)
Q1. 静清信用金庫で着服した犯人の名前は公表されている?
2026年2月28日時点で犯人の名前は公表されていない。公式発表では「30代男性営業担当職員」とのみ記載されている。
Q2. 静清信用金庫の着服事件の手口は?
「金利の高い定期預金に切り替える」と嘘の説明をして顧客から現金を受け取り、金庫に入金せず着服していた。
Q3. 着服された1億8200万円は被害者に返金された?
静清信用金庫が被害を受けた全顧客に対し全額を弁済済みと公式発表している。
Q4. 静清信用金庫の着服事件で犯人は逮捕された?
2026年2月28日時点で逮捕の報道はない。金庫は警察に相談中と発表しており、今後立件される見通し。
Q5. 業務上横領で1億円以上だと懲役何年になる?
法定刑は10年以下の懲役。過去の判例では1億6500万円の横領で懲役7年の実刑判決が出ている。
Q6. 静清信用金庫の用宗支店はどこにある?
静岡県静岡市駿河区下川原6-20-13。用宗駅前支店は同区用宗4-5-26に所在する。
Q7. なぜ犯人は自分から着服を申告した?
本人は「着服が高額になり、これ以上は続けられないと思った」と説明している。
Q8. 静清信用金庫に行政処分は出る?
2026年2月28日時点で行政処分の発表はない。金庫は監督官庁に報告済みで、今後の対応は未定。
リアルタイムニュースNAVI 編集部
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📚 参考文献
- 静清信用金庫「不祥事件発生のお知らせとお詫びについて」(2026年2月27日)
- 日テレNEWS NNN(SDT)「静清信用金庫30代の男性職員が顧客預金など1億8200万円着服する不祥事」(2026年2月28日)
- TBS NEWS DIG(SBS)「信金30代男性職員が1億8200万円着服」(2026年2月28日)
- 静岡朝日テレビ「顧客の口座から約2億円を着服 静清信用金庫の男性職員が自分で申告」(2026年2月27日)
- FISC 金融情報システムセンター「内部不正対策はなぜ難しいか?」(2024年11月27日)
- 弁護士法人ALG「高額な業務上横領で逮捕されてしまったら」
- ウェルネス法律事務所「業務上横領とは?構成要件・時効・判例」