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性的同意はなぜ難しい?「雰囲気壊れる」は思い込みだった【調査データ】

性的同意はなぜ難しい?「雰囲気壊れる」は思い込みだった【調査データ】

| 読了時間:約10分

性的同意が「難しい」のは、あなたが相手を大切にしたいと思っているからだ。
Tinder×mimosasの1,664人調査で、94.6%が「同意は重要」と答えながら約4割が「取り方がわからない」と回答した。
データを読み解くと、「雰囲気が壊れる」という恐れとは正反対の事実が浮かび上がる。

 

 

 

なぜ性的同意は「難しい」のか――調査で見えた3つの壁

20人中19人が「大事」と答えた。なのに5人中2人は「難しい」と感じている。

Tinderの公式プレスリリースによると、TinderとNPO法人mimosasが18〜33歳の1,664人を対象に行った調査で、「同意は重要」と回答した人は94.6%に達した。

一方で、同意を取ることが「難しい/やや難しい」と感じる割合は男性45.2%、女性33.7%だった。

📊 「難しい」理由の上位3つ

「雰囲気を壊してしまうのではという懸念」(54.4%)、「どう伝えればよいか分からない」(54.1%)、「断られるかもしれない不安」(53.7%)
(出典:Tinder×mimosas共同調査)

3つの理由に共通するのは、「面倒くさい」ではない。
相手を傷つけたくない、嫌われたくない、関係を壊したくない――そうした気持ちだ。

つまり難しさの正体は「関係を壊したくない」という、相手を大切にしたい思いの裏返しである。


男性ほど「自分が聞かなきゃ」と背負い込んでいる

この難しさには男女差がある。
Z世代の男性は48.6%が難しいと答え、女性の38%を10ポイント以上上回った。

なぜか。
同じ調査で「同意は誰が確認するものか」を聞いた結果にヒントがある。

  お互いに確認 自分が確認
男性 64.7% 17.1%
女性 80.4% 5.3%

(出典:Tinder×mimosas共同調査)

男性は「自分が聞かなきゃ」と一方的に責任を背負い込む傾向が強い。
社会心理学で「役割期待」と呼ばれる現象に近いだろう。

「男が聞くもの」「女が応じるもの」という無意識の固定観念が、同意のハードルを上げている。

mimosasも「社会構造の中に組み込まれている無意識の"男らしさ""女らしさ"が影響している」とコメントしている。

💡 認識ひとつで難しさが変わる

「同意はお互いに確認するもの」と考えている人は、難しさを感じる割合が38.0%にとどまる。
「自分が確認するもの」と考える人の45.7%より7.7ポイント低い
認識をひとつ変えるだけで、ハードルが下がる。

だが、ここでもう一つ気になることがある。
同意を取られた側は、本当に「引いて」いるのだろうか。

 

 

 

「雰囲気が壊れる」は思い込みだった――聞かれた側の本音

同意を求められた側は、嫌がるどころか歓迎していた。

「雰囲気を壊してしまうのでは」。
調査でも54.4%がこの懸念を抱いている。

聞いたら白ける、引かれる、二度とこの空気は戻らない――多くの人がそう恐れていた。

📊 同意を求められた側の反応

ところが「同意を取られることについてどう感じるか」を聞いたところ、ほぼすべてのシチュエーションで「安心する」「信頼できる」「嬉しい」が4割以上を占めた。
(出典:Tinder×mimosas共同調査)

雰囲気は壊れる安心と信頼が生まれる
これがデータの答えだ。


「断ったら大変なことになる」も幻想だった

同意を取ることだけでなく、「断ること」への恐怖も根強い。
しかしデータはここでも思い込みを覆す。

「断ったことで困ったことがあるか」を聞いた結果、最多回答は「特に困ったことも良かったこともない」25.5%)だった。

「話し合いながら関係を進めることができた」「信頼関係が深まった」というポジティブな回答もそれぞれ約10%見られた。

断ることは「大事件」ではなく「普通のこと」だった


「察する文化」が思い込みを固定している

ではなぜ、実態と大きくかけ離れた恐怖が広がっているのか。

ひとつの背景として、日本社会に根づく「言わなくても伝わるはず」という文化があるのではないか。
言語化しないことが思いやり、空気を読むことが美徳――そうした価値観が、性に関するコミュニケーションを「恥ずかしいもの」「野暮なもの」に押し込めてきた。

📌 みたらし加奈氏の指摘

mimosas副理事のみたらし加奈氏はHuffPostのインタビューで、「やめて」が英語圏に "Yamete" として輸出され「恥じらいながらのYes」と解釈されている現状を指摘。
「どんな場合でも『やめて』はNoです」と断言した。

Z世代の57%は「同意は信頼関係を深めてくれる」と回答している。
世代が変われば「同意=野暮」という空気も変わっていくだろう。

同意を求めることも、求められることも、データ上はポジティブな体験だとはっきり示されている。
では、なぜこれほど多くの人が具体的なやり方を知らないのか。

 

 

 

6割が「学んだことがない」――教育の空白と、断れなかった人たちのその後

同意が難しい最大の理由は、「教わっていない」からだ。

「運転は大事だ」と思いつつ教習所に行ったことがない人が6割いたら、事故は減らない。
性的同意でもまったく同じことが起きている。

📊 学習機会の不足

「同意の取り方・伝え方を学んだことがない」と回答した人は全体の62%
26〜33歳の女性では75%にのぼった。
(出典:Tinder×mimosas共同調査)

4人に3人は「撤回できる」を知らない

知識の空白は深刻だ。
「同意はいつでも撤回できる」を「よく知っている」と答えた人はわずか27%

「同意を確認・表明する方法」を知っている人も28.2%しかいない。

一度OKしたら取り消せない――4人に3人がそう思っている。
だが同意とは本来、途中でいつでも「やっぱりやめたい」と言えるものだ。
この基本原則が7割以上に届いていない。

📌 高校生1,000人調査でも

プラン・インターナショナルの調査でも、高校生の68%が性的同意を「知らない」「聞いたことはあるが説明できない」と回答。
一方で78%は学校で「教えてほしい」と答えた。
知識を求める声はあるのに、教育が追いついていない。

 

 

 

パートナーに「今日はやめたい」と言えるか

教育の空白は、現実の被害として表れている。

女性の39.2%が「断れなかった経験がある」と答えた。
その後の感情は重い。

⚠️ 断れなかった後に起きたこと

「時間が経ってから後悔した」38.5%
「相手に伝えたいことを言葉にしづらくなった」30.5%
「自己嫌悪にかられた」23.4%
(出典:Tinder×mimosas共同調査)

パートナーに「今日はやめておきたい」と、ためらいなく言えるだろうか。
即座に「はい」と答えられない人は少なくないはずだ。

mimosasは「断れない状況そのものが暴力になり得る」とコメントしている。

📌 法律は変わった

2023年7月、刑法が改正され、不同意性交等罪ふどういせいこうとうざいが新設された。
性交同意年齢せいこうどういねんれいも13歳から16歳に引き上げられた。
法律は変わった。しかし、同意の取り方を教える仕組みがなければ、法律だけでは人を守れない。

教わっていないのだから難しいのは当然だ。
では、具体的にどう同意を取ればいいのか。

 

 

 

具体的にどう同意を取ればいいのか――「FRIES」と日常の実践

同意の取り方には、国際的に使われている指標がある。FRIESだ。

英語で「フライドポテト」を意味するこの言葉は、性的同意に必要な5つの条件の頭文字をとったものだ。
HuffPostの講演レポートで、Tinder×mimosasの合同講演会でも紹介された。

頭文字 英語 意味
F Freely given 自分の自由な意志で同意している
R Reversible いつでも撤回できる
I Informed 何に同意するか理解している
E Enthusiastic 嫌々ではなく積極的にYesと言っている
S Specific その行為だけに有効。別のことには及ばない

(出典:Tinder×mimosas合同講演会)

堅苦しく見えるが、日常の言葉にすると簡単だ。
「したくないならしなくていいよ」がF。「途中でやめたくなったら言ってね」がR。「今日はここまでにしよう」がS。


同意は「儀式」ではなく、日常の延長

性的同意を「セックスの前に堅苦しく確認する儀式」だと思っている人は多い。
知恵袋にも「いちいちやり取りはしませんよね?」という投稿がある。

しかしmimosas代表理事の疋田万理氏はこう語っている。
「友達にランチを食べに行こうと誘うことも同意です。日々のカジュアルなコミュニケーションの中で、健全な性的同意が実現する」。

つまりランチに誘うのも同意だ。
「これ食べていい?」「写真撮っていい?」。
日常で当たり前にやっている確認の延長線上に性的同意がある。

✅ 具体的な第一歩

PILCONの解説ページによると、「性的同意は、言葉で明確に取るのが確実な方法」とされている。
お互いが心地よく確認しあえる言葉を事前に話し合っておくのもひとつの手だ。

3月4日からは、Tinderのアプリ内でも調査結果を知らせる啓発カードが配信されている。
mimosasはInstagramで同意の取り方やチェックリストを発信している。
学びの入り口はすでにいくつも用意されている。

みたらし加奈氏は調査を受けてこうコメントした。
「同意を知識だけではなくコミュニケーションの文化へ転換していくことは急務です」。
同意は特別なルールではなく、相手と自分を大切にするための、ごく当たり前の会話だ。

 

 

 

まとめ

  • 95%が「大事」と答えながら4割が「難しい」。難しさの正体は無関心ではなく、関係を大切にしたい気持ちの裏返しだった
  • 「雰囲気が壊れる」は思い込み。同意を求められた側は安心・信頼・嬉しいと感じている人が4割を超えていた
  • 62%が同意の取り方を学んだことがない。教育の空白が「大事だけどできない」を生んでいる
  • 同意は日常の延長。「写真撮っていい?」と同じ感覚で、FRIESの5条件を意識するところから始められる
  • 「お互いに確認するもの」と考えるだけで、難しさが7.7ポイント下がる。一方的に背負い込まなくていい

よくある質問(FAQ)

Q1. 性的同意はどうやって取ればいいの?

言葉で明確に確認するのが確実。「したくないならしなくていいよ」など日常の言葉でOK。FRIESの5条件が国際的な指標になっている。

Q2. 性的同意を取ると雰囲気が壊れない?

調査ではほぼ全シチュエーションで「安心する」「信頼できる」「嬉しい」が4割以上。壊れるどころか信頼が深まるというデータが出ている。

Q3. 性的同意はいつでも撤回できる?

できる。一度OKしても途中で「やめたい」と言う権利がある。ただし「撤回できる」を知っている人は全体の27%にとどまっている。

Q4. 不同意性交等罪とは?

2023年7月の刑法改正で新設された罪。同意のない性行為を処罰する。性交同意年齢も13歳から16歳に引き上げられた。

Q5. なぜ若い世代ほど性的同意が難しいと感じている?

Z世代は同意の重要性を強く認識している分、実践とのギャップを自覚しやすい。また62%が取り方を学んだことがないことが影響している。

Q6. FRIESとは何?

性的同意の5条件の頭文字。Freely given(自由意志)Reversible(撤回可能)Informed(理解)Enthusiastic(積極的)Specific(特定的)。

Q7. 性的同意は何歳から必要?

年齢に関係なく必要。法律上の性交同意年齢は2023年の改正で16歳に引き上げられたが、同意のコミュニケーション自体はすべての年齢で大切。

Q8. 性的同意を断ったらどうなる?

調査では最多回答が「特に困ったことも良かったこともない」(25.5%)。断ることは大事件ではなく普通のこと。

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リアルタイムニュースNAVI 編集部

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