
| 読了時間:約9分
2026年春闘の賃上げ率は5.45%と予測されている。
ただし2025年の実質賃金は4年連続マイナスだ。
「額面は増えたのに生活が楽にならない」矛盾の正体を、最新データで読み解く。
この記事でわかること
2026年春闘の賃上げ率は5%前後——ただし「実質」では4年連続マイナスの現実
3年連続で5%超の賃上げが実現する見込みだ。
第一生命経済研究所のレポートによると、2026年春闘の賃上げ率は厚労省ベースで5.45%、連合ベースで5.20%と予測されている。
2024年は5.33%、2025年は5.52%だったから、ほぼ同水準が続く計算になる。
📊 第一生命経済研究所の予測(2026年2月12日)
・厚労省「民間主要企業」ベース:5.45%(2025年実績:5.52%)
・連合集計ベース:5.20%(2025年実績:5.25%)
東京商工リサーチの調査でも、2026年度に賃上げを実施すると答えた企業は83.6%にのぼる。
5年連続で8割を超えた。数字だけ見れば、賃上げの流れは揺るがない。
5%上がっても生活が楽にならないカラクリ
「5%の賃上げ」と聞けば、生活が楽になると期待するだろう。
月給30万円なら月1.5万円、年間で約18万円のアップだ。
ところが、厚労省の毎月勤労統計によると、2025年の実質賃金は前年比1.3%減で4年連続のマイナスだった。
額面の給料(名目賃金)は2.3%増えたが、コメをはじめとする食料品の高騰が賃上げを上回った。
💡 5%賃上げの「本当の価値」
月給30万円で5%の賃上げ=月1.5万円アップ。
しかし物価が3%上がると月9,000円分が相殺される。
実質的なプラスは月6,000円ほどにすぎない。
ニュースで飛び交う「5%」という数字には、もうひとつ落とし穴がある。
予測値は調査機関によって異なる。
厚労省ベースで5.45%、連合ベースで5.20%、労務行政研究所では4.69%だ。
母集団が大企業中心か中小込みかで、1ポイント近い差が出る。
自分にとっての「5%」が何を指すのか、見極めが要る。
数字の全体像はわかった。では、どの業界で賃上げが進んでいるのか。
自動車・電機が強気——マツダは集中回答日を待たず満額回答
トランプ関税の逆風にもかかわらず、大企業は攻めの姿勢を崩していない。
自動車業界は2026年春闘で最も意外な動きを見せた。
米国の関税政策で業績に下押し圧力がかかるなか、マツダ・三菱自動車・ヤマハ発動機が3月18日の集中回答日を待たず、初回交渉で満額回答した。
📰 マツダの早期満額回答
マツダはベースアップと定期昇給を合わせ、月額1万9,000円の賃上げで決着。
集中回答日より大幅に早い妥結は異例だ。(読売新聞 2026年2月25日報道)
関税で自動車は賃上げどころではない → 企業側は人材流出のリスクをより深刻に受け止めている。
自動車総連の要求目安も「月1万2,000円以上」と、前年の「月1万2,000円」に「以上」の2文字が加わった。
わずかな変化だが、トーンは強まっている。
電機連合は過去最高のベア要求
電機連合のベア統一要求は月1万8,000円以上。
1998年に現在の要求方式になって以来、最も高い水準だ。
日立製作所や三菱電機の労組も同額を経営側に提出している。
| 業界 | 要求額(月額) | 特徴 |
|---|---|---|
| 電機連合 | 1万8,000円以上 | 1998年以降で過去最高 |
| 全トヨタ労連 | 1万7,820円 | 微減だが高水準を維持 |
| 自動車総連 | 1万2,000円以上 | 関税下でも「以上」を追加 |
全トヨタ労連の平均要求額は1万7,820円で、前年の1万7,929円をわずかに下回った。
ただし注目すべきは、一時金(ボーナス)の要求が過去最高の平均5.29カ月分に達した点だ。
基本給は微減でも、一時金で報いるという新しいバランスが見え始めている。
経団連も今年の経労委報告で「賃金引上げの力強いモメンタムのさらなる定着へ」と掲げ、ベア検討を交渉のスタンダードと位置づけた。
労使ともに「賃上げは続ける」という合意は固い。
だが、日本の企業の99.7%は中小企業だ。大企業の動きは本当に波及するのだろうか。
中小企業の「賃上げ疲れ」——連合目標6%に届くのはわずか7.2%
大企業の春闘ニュースを見て「うちは関係ない」と感じたことはないだろうか。その感覚は、数字で裏づけられている。
連合は中小企業に「6%以上」の賃上げを求めている。
しかし東京商工リサーチの調査によると、6%以上の賃上げを予定している中小企業はわずか7.2%だ。
前年の15.2%から半減した。
2025年
15.2%
2026年
7.2%
「83%が賃上げ」の裏側
「83.6%の企業が賃上げする」と聞けば安心しそうだが、中身をのぞくと景色は変わる。
同じ東京商工リサーチの調査で、賃上げ予定企業のうち30.4%は「毎年の賃上げを続けられるかわからない」と答えた。
賃上げの理由も象徴的だ。
トップは「従業員の離職防止」で80.3%。
「業績向上分の還元」はわずか30.5%にすぎない。
つまり、稼いだから上げるのではなく、人を逃さないために無理して上げている企業が大半を占める。
⚠️ 防衛的賃上げの実態
エデンレッドジャパンの記事によると、業績が改善していないのに人材確保のため仕方なく行う「防衛的賃上げ」を実施した中小企業は60.1%にのぼる。
| 指標 | 大企業 | 中小企業 |
|---|---|---|
| 賃上げ実施予定 | 93.8% | 82.8% |
| 2025年の賃上げ率 | 5.35% | 4.35% |
| ベースアップ実施 | 66.3% | 55.3% |
freeeの解説記事によれば、2025年春闘で大手の平均賃上げ率は5.35%、中小は4.35%だった。
差は1ポイント。月給30万円ベースなら月3,000円の差だが、これが毎年積み重なる。
春闘の恩恵が届かない業界
格差はさらに深い層にも広がる。
UAゼンセンの調べでは、介護従事者の2025年度の賃上げ率は1.4%にとどまった。
全産業平均の5%超とは大きな開きがある。
介護や医療は国が定める報酬制度に縛られ、春闘で交渉しても原資が増えない構造だ。
日経新聞の報道では、介護職員の平均月給は27万円弱と、フルタイムの一般社員より7万円低く、差は拡大傾向にあるという。
大企業と中小企業、さらに公定価格に縛られる業界。格差は三重構造になっている。
この先、流れが変わる転機はあるのだろうか。
3月18日が分水嶺——集中回答日後に何が起こるか
2026年春闘の最大の山場は、3月18日の集中回答日だ。
この日に大企業の回答が出揃い、2026年の「賃上げ相場」が確定する。
中小企業はこの相場を参照して交渉を進めるため、集中回答日の水準が高ければ高いほど、中小への波及効果も大きくなる。
📅 2026年春闘のスケジュール
① 3月5日:連合が要求集計結果を公表(組合側の要求水準が判明)
② 3月18日:集中回答日(大企業の回答が出揃う)
③ 3月23日:連合が第1回回答集計結果を公表
④ 4月以降:中小企業の交渉が本格化、給与への反映も4月が多い
3月5日の「プレビュー」に注目すべき理由
多くの人は3月18日にだけ注目するが、3月5日の連合・要求集計結果もカギを握る。
これは主要労組の賃上げ要求を集計したもので、過去の傾向では要求水準と最終的な賃上げ率は連動している。
第一生命経済研究所のレポートはこう分析する。
要求集計で前年を大きく上回れば、賃金動向に楽観的な見方が広がり、日銀が利上げに前向きになるだろう。
逆に前年から明確に鈍化すれば、中小企業の弱さが改めて注目される——と。
実質賃金がプラスに転じる条件
⚠️ ここからは推測を含む
以下の内容は現時点で確定した事実ではなく、各種データに基づく見通しだ。
春闘の結果は日銀の利上げ判断にも直結する。
賃上げが高水準で維持されれば、日銀は追加利上げに踏み切りやすくなる。
利上げが進めば円安に歯止めがかかり、輸入物価が下がる。
物価の上昇が鈍化すれば、5%台の賃上げで実質賃金がプラスに転じる道が開ける。
第一生命経済研究所は「少なくとも2026年3月まで実質賃金がプラスになる」との分析を示している。
ただし、円安がさらに進んだり、エネルギー価格が再び上がったりすれば、このシナリオは崩れるだろう。
🔑 焦点は「5%」の数字そのものではない
2026年春闘の焦点は、物価上昇を差し引いた実質賃金をプラスに転じさせ、その状態を定着できるかどうかだ。
3月5日と3月18日の結果が、その行方を左右する。
まとめ
- 賃上げ率の予測は5%前後。3年連続の高水準が続く見通しだ
- ただし実質賃金は4年連続マイナス。額面が増えても物価に食われている
- 大企業は強気で、マツダなど自動車メーカーが早期に満額回答した
- 中小企業は「賃上げ疲れ」が深刻。連合目標6%に届く企業は7.2%のみ
- 3月5日の要求集計、3月18日の集中回答日が分水嶺になる
春闘のニュースを見るとき、「5%上がった」という見出しだけでなく、それが名目なのか実質なのか、大企業の話なのか中小を含むのかを見分けるだけで、自分の生活への影響がぐっと読みやすくなる。
よくある質問(FAQ)
Q1. 2026年春闘の賃上げ率はどのくらい?
厚労省ベースで5.45%、連合ベースで5.20%と予測されている。3年連続5%超の見通しだ。
Q2. 春闘の賃上げはいつ自分の給料に反映される?
多くの企業で4月の給与から新しい賃金が適用される。中小企業は大企業より遅れる傾向がある。
Q3. なぜ5%賃上げでも実質賃金がマイナスなのか?
2025年の物価上昇率が3%超だったため。額面は増えても物価に追いつかず、実質マイナスが続いた。
Q4. 中小企業でも5%の賃上げは実現する?
5%以上を予定する中小企業は35.5%。連合目標の6%以上に届く企業はわずか7.2%にとどまる。
Q5. 春闘の集中回答日とは何か?
大企業が労使交渉の回答を一斉に出す日。2026年は3月18日に設定されている。
Q6. 会社に労働組合がなくても春闘の恩恵はある?
大企業の回答が賃上げ相場を形成し、労組がない企業も参考にすることが多い。波及には時間差がある。
Q7. ベースアップと定期昇給の違いは?
ベースアップは全社員の基本給を一律に底上げすること。定期昇給は勤続年数に応じた個人ごとの昇給だ。
Q8. 2026年春闘で注目の企業はどこ?
マツダ・三菱自動車・ヤマハ発動機が集中回答日前に満額回答。電機連合は過去最高のベア要求を提出した。
リアルタイムニュースNAVI 編集部
最新ニュースをわかりやすく、いち早くお届けします。
📚 参考文献
- 第一生命経済研究所「2026年・春闘賃上げ率の見通し(改定版)」(2026年2月12日)[専門:賃上げ率予測・産別分析・日程情報]
- 東京商工リサーチ「2026年度の賃上げに関するアンケート調査」(2026年2月20日)[専門:賃上げ実施率・持続性・産業別データ]
- エデンレッドジャパン「春闘2026の賃上げ率と有効な施策」(2026年2月19日)[補完:中小企業の賃上げ疲れ・防衛的賃上げデータ]
- freee「2026年春闘 賃上げ率の予測は?」(2026年1月29日)[補完:大企業・中小企業格差の数値]