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高市首相「補正予算ゼロではない」はなぜ?決別宣言11日で発言の真意

高市首相の補正予算決別宣言から11日で「ゼロではない」発言に至った背景と中東情勢のリスクを解説するアイキャッチ画像

| 読了時間:約8分

「補正予算と決別する」。
高市首相がそう宣言してからわずか11日で飛び出したのは、正反対にも聞こえる言葉だった。

方針撤回ではない。
首相答弁の真意と、背景にある中東リスクを整理する。

 

 

 

施政方針演説しせいほうしんえんぜつからわずか11日——「補正予算決別」と「ゼロではない」は矛盾するのか

高市首相の答弁は、方針の撤回ではない。「毎年の慣例としての補正予算」と「危機への緊急対応」を分けた発言だったと読める。

2月20日「決別」、3月3日「ゼロではない」

首相官邸の施政方針演説で、高市首相はこう述べた。

「毎年補正予算が組まれることを前提とした予算編成と決別し、必要な予算は可能な限り当初予算で措置します」
(2026年2月20日・施政方針演説)

この発言の背景には、2025年度の補正予算ほせいよさんがある。
日本経済新聞の報道によると、その規模は18兆3,034億円
コロナ禍以降で最大だった。

「当初予算で絞って、補正で積み増す」。
この繰り返しが財政規律を緩めているとの批判は根強い。
高市首相の「決別」宣言は、そうした慣行を断ち切る意思表示だった。


ところが3月3日、衆院予算委員会で風向きが変わる。

「(2026年度当初予算に)できる限り盛り込んだ」としたうえで、中東情勢の長期化なら補正予算編成の「可能性はゼロではない」
(2026年3月3日・毎日新聞報道)

TBSの報道も同様の内容を伝えている。

 

 

 

矛盾ではなく、2つの「補正予算」がある

一見すると手のひら返しに見える。
だが、答弁を注意深く読むと構図が浮かぶ。

首相が「決別」したかったのは、毎年の秋に追加の予算を組むのが当たり前になっていた慣行だ。
ロイターの報道でも「毎年補正予算を編成する慣例を止め」と伝えられている。

一方、今回の「ゼロではない」は、2月28日に始まった米・イスラエルのイラン攻撃という、就任時には予見できなかった危機を受けてのものだ。

  慣例の補正予算 危機対応の補正予算
目的 当初予算の穴埋め 予見不能な緊急対策
時期 毎年秋の臨時国会 危機発生後に随時
首相の立場 「決別」を宣言 「ゼロではない」と含み

慣例としての補正予算と、危機対応の補正予算は別物——首相がこの区別を明言したわけではないが、答弁の文脈からはそう読み取れる。

⚠️ ただし、この解釈はあくまで答弁の文脈に基づく推測だ。
「結局は補正予算に逃げるのではないか」という懸念が消えたわけではない。
実際に補正予算を組めば「決別」の看板に傷がつくのは避けられないだろう。

では、首相にここまで踏み込ませた中東情勢とは、どれほど深刻なのか。

 

 

 

原油82ドル、備蓄254日分——中東情勢が日本経済に突きつけるリスク

石油の備蓄は約8カ月半分ある。だが安心するのは早い。天然ガスには制度的な備蓄がなく、在庫は約3週間分しかない。

イラン攻撃からホルムズ海峡ほるむずかいきょう封鎖へ

2月28日、米国とイスラエルがイランへの大規模な軍事攻撃を始めた。
野村総合研究所のコラムによると、空爆でイランの最高指導者ハメネイ師が死亡した。

2025年6月の前回攻撃よりも大規模で、長期化するリスクが高いという。

東洋経済オンラインは、国際指標の北海ブレント原油が一時1バレル82ドルまで急騰したと報じた。
年初から10ドル以上の上昇だ。

イラン革命防衛隊はホルムズ海峡の封鎖を主張。
多くの海運会社が運航を停止し、事実上の封鎖状態になっている。
(日本総研・2026年3月2日)

日本が輸入する原油の9割超が中東から届く。
その大半が通るホルムズ海峡が使えなくなれば、影響は直撃する。

 

 

 

石油254日分の「安心」と、天然ガス3週間の「盲点」

テレビ朝日の報道によると、高市首相は石油備蓄が254日分あると明らかにした。

内訳は国家備蓄が146日分、民間備蓄が101日分、産油国との共同備蓄が7日分。
約8カ月半分だ。


ただし、ここに盲点がある。

石油が254日分あるから安心天然ガス(LNG)には制度的備蓄がなく在庫は約3週間分

野村證券の岡崎康平氏が指摘している。
天然ガスは日本の火力発電の主力燃料だ。

石油が8カ月半もつ一方で、電力の命綱であるLNG(液化天然ガス)が3週間で底をつきかねない。

石油備蓄

254日分

天然ガス在庫

約3週間分

封鎖が長引けば電力供給のほうが先に追い込まれるおそれがある。
電気代の不安は、この構造的な弱点から来ている。

 

 

 

3つのシナリオ——最悪ならガソリン200円超

専門機関の試算を並べると、事態の深刻さが数字で見えてくる。

シナリオ 原油価格 GDP影響
楽観(短期収束) 約77ドル 軽微
ベース(長期化) 87ドル ▲0.18%
悲観(完全封鎖) 140ドル ▲0.65%

出典:NRI(楽観〜悲観)、野村證券(100ドル到達時は▲0.3%程度と試算)

NRIのベースシナリオでは、ガソリン価格が約3割上昇しリットル200円を超える
暫定税率の廃止で下がった分が帳消しになる計算だ。

日本総研の石川智久氏は、最悪のケースで原油が120ドルまで上がり「21世紀のオイルショック」に警戒が必要だと述べている。

毎月の電気代やガソリン代に不安を感じているなら、この問題はあなたの財布に直結している。
日本経済への打撃は無視できない。
では、政府には補正予算以外にどんな手が残されているのか。

 

 

 

補正予算なしでも打てる手はある——予備費よびひ8,600億円と電気ガス補助の行方

補正予算を待たなくても、使えるお金はある。2025年度の予備費が約8,600億円、未使用のまま残っている。

予備費とは何か

予備費とは、年度の予算にあらかじめ組み込まれた「予備の資金」だ。
国会の新たな議決なしに、政府の判断で使える。

野村證券の分析によると、コロナ禍の2021年度に予備費を年度またぎで使った前例がある。
つまり制度上、2025年度の予備費を4月以降の対策に使うことも不可能ではない。

8,600億円は2025年度補正予算(18.3兆円)の約20分の1にすぎない。
大規模な対策には足りないが、電気・ガス補助の延長程度なら対応できる規模だ。

 

 

 

電気・ガス補助は4月以降どうなるか

現在の電気・ガス料金の補助は、2026年1〜3月の使用分まで。
2025年度の補正予算で手当て済みだ。

FNNの報道によると、高市首相は3日の衆院予算委で2つのことを述べている。

「LNGの輸入価格は上昇したとしても、電気・ガス料金がただちに上昇することはない」
「いま直ちに延長を判断する段階にない」
(2026年3月3日・FNN報道)

首相は慎重だ。
だが与党内には温度差がある。
自民党の鈴木幹事長は同日の記者会見で、原油高騰による電気・ガス料金への跳ね返りを懸念する発言をしている。

LNGの価格が上がっても、電気料金に反映されるまでには数カ月のタイムラグがある。
この数カ月が、政府にとっての判断猶予だろう。

 

 

 

今後の見通し——3段階のエスカレーション

⚠️ ここからは現時点の情報に基づく推測だ。

中東情勢の推移によって、政府の対応は段階的に進むとみられる。

第1段階(3〜4月):予備費で機動的に対応
情勢が短期で収束すれば、予備費の範囲で電気・ガス補助の延長や追加の物価対策を行う。


第2段階(5〜6月以降):補助延長が本格議論に
原油価格が80ドル台後半で推移し続ければ、4月以降の補助延長が政治課題になる。
NRIの試算では、この水準でも物価は0.31%押し上げられる。


第3段階(夏以降):補正予算が現実味を帯びる
ホルムズ海峡の封鎖が長期化し原油が100ドルを超えれば、予備費では足りない。
首相が言った「ゼロではない」が現実になる局面だ。

予備費→補助延長→補正予算という3段階のエスカレーション。
首相の「ゼロではない」は、この最終段階を視野に入れた発言だったのだろう。

方針転換ではなく、危機の深刻度に応じた段階的な対応——そう位置づければ、「決別」と「ゼロではない」は一応の筋が通る。
ただし、実際に補正予算を組むことになれば、就任5カ月で看板政策に修正を迫られた事実は残る。
問われるのは「決別」の言葉の重さだ。

 

 

 

まとめ

  • 高市首相の「ゼロではない」は方針撤回ではなく、中東危機という想定外への含みだった
  • 石油備蓄は254日分あるが、LNG在庫は約3週間分。電力供給の脆弱さが盲点
  • 2025年度の予備費が約8,600億円残っており、補正予算の前にまず使える手段がある
  • 中東情勢の長期化なら「予備費→補助延長→補正予算」の3段階で対応が進む見通し
  • 「決別」を掲げた政権が最初の危機にどう向き合うか。財政規律の本気度が試されている

よくある質問(FAQ)

Q1. 高市首相の「補正予算と決別」方針は撤回されたのか?

撤回ではない。毎年の慣例としての補正予算をやめる方針は維持しつつ、中東危機への対応として限定的に可能性に言及した。

Q2. ホルムズ海峡が封鎖されると日本にどんな影響がある?

日本は原油の9割超を中東に依存しており、封鎖が長期化すれば原油・ガス価格が高騰し、ガソリンや電気代が大幅に上がるおそれがある。

Q3. 石油備蓄254日分で足りるのか?

石油は約8カ月半分あるが、火力発電の主力燃料である天然ガス(LNG)には制度的備蓄がなく在庫は約3週間分しかない。

Q4. 電気・ガス料金の補助は4月以降も延長されるのか?

高市首相は「直ちに延長を判断する段階にない」としているが、中東情勢が長期化すれば延長が議論される見通し。

Q5. 補正予算はいつ編成されるのか?

現時点で決定はしていない。まず予備費(約8,600億円)で対応し、情勢が長期化すれば夏以降に補正予算が現実味を帯びる。

Q6. ガソリン価格はどこまで上がるのか?

NRIの試算では、ベースシナリオで約3割上昇しリットル200円超。最悪シナリオでは原油140ドルでさらなる高騰のおそれ。

Q7. 2025年度の予備費はいくら残っているのか?

野村證券の分析によると約8,600億円が未使用で残っている。コロナ禍では年度をまたいで使った前例もある。

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リアルタイムニュースNAVI 編集部

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