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TOEIC990点満点中955点。
だがそのスコアを出したのは、受験した本人ではなかった。
警視庁は2026年2月26日、TOEICの替え玉受験をした疑いで37歳の女性会社員を逮捕した。
女は中国籍の男になりすまし、ほぼ満点のスコアを叩き出していた。
逮捕はこれで4回目だ。
なぜ繰り返し替え玉受験に手を染めたのか。
そして800人超が関わったとされるTOEIC不正の全体像とは。
事件の背景から制度の変更まで整理する。
この記事でわかること
TOEIC955点を叩き出した「替え玉」の正体——37歳女を逮捕
産経新聞の報道によると、警視庁富坂署は有印私文書偽造・同行使の疑いで、東京都新宿区の会社員・森山瑠威容疑者(37)と、中国籍の専門学生の男(20)を逮捕した。
📋 逮捕容疑
2025年5月、豊島区のTOEIC試験会場で、森山容疑者が男になりすまして解答用紙に男の名前を書き、不正に受験した疑い。——産経新聞(2026年2月26日)
ほぼ満点——955点のインパクト
共同通信の報道によると、この替え玉受験の結果は990点満点中955点だった。
TOEICの公式データでは、900点以上を取る受験者は全体のごく一部にすぎない。
955点ともなれば上位約1%に入る水準だろう。
英語を仕事に使うビジネスパーソンでも、なかなか届かないスコアだ。
そしてこの驚異的なスコアの「対価」は、報酬として約100万円。
FNNプライムオンラインの報道によると、男は「英語が苦手なのでなんとかしたいと思った」と容疑を認めている。
TOEIC受験料
7,810円
替え玉の報酬
約100万円
受験料約128回分に相当する金額だ。
📝 容疑者の認否
森山容疑者は黙秘している。一方、依頼した男は容疑を認め、「替え玉受験を依頼した。100万ほど払った」と供述した。——共同通信(2026年2月26日)
なぜバレた?——東洋大の顔写真が一致しなかった
産経新聞の同報道によると、事件発覚の端緒は東洋大学大学院だった。
昨年、同大学院で中国籍の女子学生の在留カードと受験書類の顔写真が異なっていた。
大学側がこの不一致を発見し、警察に相談したことで捜査が始まった。
その過程で森山容疑者が同大入試やTOEICで替え玉受験をした疑いが浮上する。
自宅からはウィッグや偽造カード、複数の顔写真が押収された。
⚡ 注目ポイント
森山容疑者の逮捕はこれで4回目。1回きりの出来心ではない。繰り返し替え玉受験をこなす「プロ」の存在が浮き彫りになった。
では、この女は何者だったのか。
逮捕4回目——「留学生支援会社」社員が替え玉のプロになるまで
NHKの報道によると、森山容疑者は留学生を支援する会社の社員だった。
TOEIC不正受験といえば、留学生同士が示し合わせて行うイメージが強いのではないだろうか。
2025年5月以降に摘発された800人超の不正関与者は、ほとんどが中国籍だった。
ところが今回の実行犯は、留学生同士の不正 → 留学生の側に立つ立場の日本の会社員だ。
支援する側の人間が、替え玉受験を「請け負う」構図が見えてくる。
📋 時事通信の報道
森山容疑者の逮捕は4回目で、これまでに東洋大などの大学院入試で、中国人の女の替え玉受験をしたとして逮捕、起訴されている。——時事通信(2026年2月26日)
東洋大入試でも——替え玉で入学、7月に取消
共同通信によると、森山容疑者は以前、中国籍の女性になりすまして東洋大大学院の入試を替え玉受験し、すでに逮捕・起訴されていた。
毎日新聞の報道では、この替え玉受験でも合格の結果を出しており、依頼した女性は実際に大学院へ入学していたという。
不正が発覚した後、2025年7月に入学は取り消された。
つまり森山容疑者は、女性に成り代わって大学院入試を突破し、さらに男性に成り代わってTOEICで955点を取った。
性別や国籍を越えてなりすますために、ウィッグや偽造カードを使い分けていたことになる。
替え玉受験は何の罪になるのか
他人の名前を解答用紙に書いて試験を受ける行為は、有印私文書偽造罪と偽造有印私文書行使罪にあたる。
⚖️ 法定刑
弁護士法人ベリーベストの解説によると、この罪の法定刑は3か月以上5年以下の懲役。窃盗罪と同程度の重さだ。
森山容疑者は4回逮捕されている。
仮にすべてが起訴・有罪となれば、量刑が相当重くなるのではないだろうか。
しかし森山容疑者の事件は、TOEIC不正というもっと大きな問題の一部にすぎない。
2025年以降、組織的な不正が次々と明るみに出ている。
803人の組織的不正——TOEICは「狙われやすい試験」だったのか
2023年5月から2025年6月までのわずか2年間で、TOEICの不正に関わったとみられる受験者は803人。一般的な試験会場1回分の受験者数を上回る規模だ。
産経新聞の2025年12月の報道は、この不正の手口を詳しく伝えている。
スマートグラスと直径3ミリのイヤホン
発端は2025年5月、中国籍の京大大学院生・王立坤被告が板橋区の試験会場で現行犯逮捕された事件だった。
王被告はマスクの内側に約7センチの小型マイクを仕込み、同じ会場で受けている仲間にリアルタイムで解答を伝えていたとみられる。
仲間の側からは、直径約3ミリのビーズ形イヤホンが押収された。
TOEICを受けたことがある人なら、会場入口の本人確認がどれほど形式的だったか覚えているのではないだろうか。
受験票の写真と顔を照合する程度で、身分証のICチップを読み取る仕組みはなかった。
産経新聞の2026年2月の報道によると、さらに巧妙な手口があった。
郵便番号で受験生の会場が割り振られるシステムを悪用し、同じ住所で31人が受験を申し込んでいた。
そのうち28人が高得点だったという。
💡 不正の仕組み
英語が堪能な王被告と解答を教えてもらう仲間が、一緒の会場で受験できるように画策していた。——産経新聞(2025年12月25日)
早稲田大学は大学院生5人の入学を取り消した
この大規模不正は大学にも波及した。
2026年1月、早稲田大学は不正受験で取得したTOEICスコアを入試に使ったとして、大学院生5人の入学を取り消した。
学部入試も含めると計52人の不正が認定されている。
東洋大学大学院でも、森山容疑者の替え玉によって入学した学生の入学が取り消された。
TOEICスコアを入試に使う大学・大学院は多い。
不正スコアがそのまま「入学切符」になっていた現実は深刻だ。
TOEIC運営側の対策——何が変わるのか
IIBC(国際ビジネスコミュニケーション協会)の公式発表によると、2026年4月から本人確認書類のルールが変わる。
| 項目 | 変更前 | 2026年4月以降 |
|---|---|---|
| 日本国籍の 本人確認 |
顔写真付き身分証全般 | 免許証・パスポート・マイナンバーカード・学生証など |
| 外国籍の 本人確認 |
パスポート・学生証なども可 | 在留カード・マイナンバーカード等に限定 |
| デジタル受験票 | なし | 2026年9月までに導入予定 |
とくに大きな変更は、外国籍の受験者について本人確認書類が在留カードやマイナンバーカードなどに限定される点だ。
偽造が難しいICチップ搭載の書類に絞ることで、なりすましの防止を図る。
✅ デジタル受験票の導入
2026年9月までにデジタル受験票を導入予定。ICチップに登録された顔写真・氏名と申込時の情報を照合する仕組みで、替え玉受験はかなり困難になるだろう。
一連のTOEIC不正受験事件は、日本の資格試験が「性善説」で運営されてきたことの限界を突きつけた。
制度の穴をふさぐ対策は始まっているが、全面的な導入は2026年後半を待たねばならない。
まとめ
- 森山瑠威容疑者(37)がTOEIC替え玉受験で4回目の逮捕。990点満点中955点を叩き出し、報酬は約100万円
- ウィッグ・偽造カードで性別・国籍を越えてなりすまし。「留学生支援会社」の社員が替え玉のプロだった
- 2年間で803人が関与した組織的不正の一端。早稲田大は大学院生5人の入学を取り消した
- 2026年4月に本人確認を厳格化、9月にデジタル受験票導入予定
- TOEICのスコアは就職や進学で大きな意味を持つ。不正で取ったスコアが通用する状態は放置できない
今回の事件で気になることがあれば、各報道機関の続報やIIBCの公式サイトで最新の情報を確認してほしい。
よくある質問(FAQ)
Q1. TOEIC替え玉受験をしたら何の罪になる?
有印私文書偽造・同行使罪にあたり、法定刑は3か月以上5年以下の懲役。
Q2. TOEIC替え玉受験で逮捕された女は何者?
留学生支援会社の社員・森山瑠威容疑者(37)。逮捕は4回目で、過去に東洋大入試でも起訴されている。
Q3. TOEIC不正受験に関わった人数は?
IIBCの調査で、2023年5月から2025年6月の2年間に803人が不正に関与したとみられている。
Q4. TOEICの本人確認はいつから変わる?
2026年4月から本人確認書類のルールが変更され、2026年9月までにデジタル受験票の導入が予定されている。
Q5. 替え玉受験のTOEICスコアはどうなる?
運営団体IIBCが不正と認定した803人の過去の試験結果は全て無効とされた。
Q6. TOEIC替え玉受験で大学に影響はあった?
早稲田大学が大学院生5人の入学を取り消し、計52人の不正を認定。東洋大でも入学取消が出た。
Q7. TOEICのデジタル受験票とは?
ICチップに登録された顔写真・氏名と申込時の情報を照合する新方式の受験票。2026年9月までに導入予定。
Q8. TOEIC替え玉受験の報酬はいくら?
依頼者は約100万円を支払ったと供述している。受験料約128回分に相当する金額。
リアルタイムニュースNAVI 編集部
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📚 参考文献
- 産経新聞「TOEICで替え玉受験か、会社員の女らを逮捕 大学院入試でも不正か」(2026年2月26日)——逮捕事実・東洋大端緒・押収品
- 共同通信/47NEWS「替え玉受験疑い、37歳女を逮捕 TOEICで中国籍の男のふり」(2026年2月26日)——955点・100万円・過去の起訴歴
- FNNプライムオンライン「英語検定『TOEIC』で替え玉受験…955点の高得点に不正の影」(2026年2月26日)——依頼者の動機・報酬詳細
- 産経新聞「中国籍の京大院生の男ら再逮捕 中国人2人になりすまして替え玉受験か」(2026年2月17日)——京大院生事件・同住所31人
- 産経新聞「狙われた『TOEIC』 中国籍受験生による組織的不正」(2025年12月25日)——803人不正・手口詳細
- IIBC「TOEIC Programの不正受験対策強化」(2026年1月8日)——本人確認書類の変更・デジタル受験票
- 弁護士法人ベリーベスト法律事務所「替え玉受験をやったら犯罪?」——有印私文書偽造罪の法定刑