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東京23区の物価なぜ2%割れ?コアコアCPIは逆に上昇の実態

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| 読了時間:約8分

東京23区の物価上昇率が16カ月ぶりに2%を下回った。
ただし中身を見ると、補助金で数字が押し下げられただけで、食品や家賃の値上がりは続いている。

2026年2月27日、総務省が発表した東京都区部の消費者物価指数で、生鮮食品を除く総合指数、いわゆるコアCPIは前年同月比+1.8%だった。
日銀が目標とする2%を割り込んだのは、2024年10月以来はじめてとなる。

ここではこの2%割れの正体を読み解き、品目ごとの値動き、そして4月以降の見通しまでを整理する。

 

 

 

2%割れの正体——コアCPIは下がったのにコアコアCPIは逆に上昇

2月のコアCPI鈍化は、物価の地力が弱まったからではない。
電気・ガス代の補助金とガソリン減税という政策効果がほぼすべてを説明する。

専門家の分析

第一生命経済研究所の新家義貴氏によると、電気・都市ガス代のCPIへの寄与度きよどは1月の▲0.14%ポイントから2月には▲0.40%ポイントに拡大した。
鈍化分のほとんどは電気・ガス代の補助金だけで説明がつくという。

ところが、電気・ガスなどエネルギーの影響も取り除いた指標を見ると、景色はまるで違う。


ここで少し用語を整理しておく。
物価指標には3つの層がある。

指標 除外するもの 2月の数値
総合CPI なし +1.6%
コアCPI 生鮮食品 +1.8%
コアコアCPI 生鮮食品+エネルギー +2.5%

コアCPIは天候で乱高下する生鮮食品を外した数字で、ニュースの見出しによく使われる。
コアコアCPIはそこからさらにエネルギーも外し、物価の実力を映す指標だ。

今回のポイントはこの2つが逆方向に動いたこと。
コアCPIが1.8%に下がった一方、コアコアCPIは前月の2.4%から2.5%へ、むしろ上昇した。

つまり

2%割れの原因はエネルギー価格の急落に集中している。
補助金という化粧を落とせば、物価の地力はまったく衰えていない。

第一生命経済研究所の星野卓也氏も、基調的きちょうてきインフレ率の刈込平均値かりこみへいきんちが1.8%で横ばい、加重中央値かじゅうちゅうおうちは1.3%から1.4%に上昇した点を挙げ、物価に底堅さがあると分析する。
市場の期待インフレ率も約2.4%と、日銀の目標を上回ったままだ。

では、2%割れの裏側で、生活に直結する食品や家賃はどう動いているのか。

 

 

 

コーヒー豆64%、家賃32年ぶり——品目別に見る物価の二極化

物価上昇率が下がったからといって、モノの値段が下がったわけではない。
上昇のペースがやや緩んだだけだ。

しかもそれは一部の品目に限った話にすぎない。


食品——依然として高い伸びが続く

総務省の統計によると、生鮮食品を除く食料全体は前年比+5.5%
6カ月連続で伸びは縮小しているが、水準としてはまだかなり高い。

個別品目はさらに強烈だ。

品目 前年比 背景
コーヒー豆 +64.0% 主要産地の天候不良
チョコレート +26.1% カカオ豆の国際価格高騰
コメ類 +18.2% 高止まりだが鈍化
すし(外食) +16.2% 原材料費と人件費
おにぎり +13.3% コメ価格の波及

コーヒー豆は前年比64.0%の上昇
500gで800円だった豆が約1,300円になった計算だ。
毎朝の1杯が、知らないうちにじわじわ高くなっている。

ロイターによれば、日本マクドナルドも2月25日から値上げに踏み切った。
公表文には原材料費やエネルギーだけでなく、人件費の上昇が理由として明記されている。

 

 

 

家賃と通信——補助金が届かない分野の上昇

食品以外にも注目すべき動きがある。
民営家賃は前年比+2.2%で、1994年2月以来、実に32年ぶりの高い伸びとなった。

月10万円の家賃なら、1年で約2,200円の上昇に相当する。
携帯電話の通信料も+11.0%と2けたの伸びだ。
これらは政府の補助金が届かない分野で、物価の素の力を反映している。


下落の主役——政策が効いた品目

一方で、大幅に下がった品目もある。

品目 前年比 要因
電気代 -8.2% 政府の補助金
都市ガス代 -9.5% 政府の補助金
ガソリン -14.7% 暫定税率の廃止
保育所保育料 -60.4% 東京都の第1子無償化
キャベツ -43.6% 天候による豊作

TBS報道によると、保育料は東京都の第1子無償化で6割以上も減った
月5万円だった保育料が約2万円になる計算で、家計への恩恵は大きい。

二極化の構造

下がっているのは政策で抑えたもの。上がっているのは市場の力で動くもの。
統計上の2%割れと、スーパーのレジで感じる重さが一致しない理由はここにある。

なお、3月に予定されている食品の値上げは684品目
前年3月と比べると73%減で、値上げラッシュの勢いは明らかに弱まっている。

ただしTBS報道は、価格を据え置いて量を減らす「減量値上げ」が菓子類などで広がっていると伝えている。
表に出ない実質的な値上げには引き続き注意が要る。

では、電気・ガス代の補助金が縮小・終了に向かう4月以降、物価はどう動くのか。

 

 

 

補助金が終わる4月以降——物価と日銀利上げの行方

4月以降の物価と金融政策は、複数の力が同時に作用する複雑な局面に入る。
2%割れがこのまま定着するわけではない。


目先の見通し——全国CPIも2%割れへ

第一生命経済研究所の新家氏は、3月24日に発表される2月の全国コアCPIが前年比+1.6〜1.8%程度になるとみている。
全国ベースで2%を割り込めば、2022年3月以来およそ4年ぶりとなる。

物価の鈍化にともない、1〜3月には実質賃金がプラスに転じる見通しだ。
名目の賃金上昇が物価上昇を上回ることで、購買力がようやく回復に向かう。


4月以降のシナリオ——上がる力と下がる力

ただし、先行きは単純ではない。

要因 方向 内容
電気・ガス補助金の終了 物価↑ 政府公式サイトによると補助は3月で終了予定
高校授業料の無償化拡充 物価↓ 4月から所得制限なしで全高校に適用
公立小学校の給食費無償化 物価↓ 4月開始
食料品の前年高騰の裏 物価↓ 昨年の急上昇との比較で鈍化しやすい
円安の再進行 物価↑ 再び円安が進めば値上げの材料に

新家氏は、これらを総合すると4月以降もコアCPIは2%をやや下回って推移するだろうと予測する。
ただし円安が再び進めば、値上げが再加速するリスクも十分あるという。

⚠️ ここからは推測です

NRIの木内登英氏は、今回の2%割れを「過去4年に及ぶ歴史的な物価高の転機」と位置づける。
食料品の上昇率が持続的に下がってきている点を重視し、一時的な政策効果だけでは説明できない構造変化が起きているとの見方だ。

 

 

 

日銀の利上げ——専門家の見方は割れている

2%割れで利上げは遠のいた事情はそう単純ではない

第一生命の星野氏は日銀が利上げを躊躇する内容ではないと指摘する。
コアコアCPIの上昇や、市場の期待インフレ率が2%超を維持していることが根拠だ。

ロイターが伝えた市場関係者の見立ても分かれている。

専門家 予測 根拠
稲留克俊氏(三井住友トラスト) 4月 利上げのしづらさが後退
森翔太郎氏(SBI新生銀行) 7月 ハードデータの確認が先
木内登英氏(NRI) 年前半は難しい 首相の牽制けんせいが影響

背景にあるのは政治との緊張関係だ。
毎日新聞は2月24日、高市早苗首相が植田和男日銀総裁との2月16日の会談で追加利上げに難色を示したと報じた。

一方で植田総裁は読売新聞のインタビューで、3月や4月の利上げを明確に否定しなかった。

今後の焦点

補助金終了後の4月以降が本当の分岐点になる。
物価の数字がどう動くかだけでなく、政治と日銀のせめぎ合いも利上げの時期を左右する。
3月2日に予定されている氷見野良三副総裁の発言が、次の手がかりとなるだろう。

 

 

 

まとめ

  • ① 2%割れの正体は補助金効果。 コアCPIは1.8%に下がったが、エネルギーを除いたコアコアCPIは2.5%に上昇。物価の地力は衰えていない。
  • ② 品目別では二極化が鮮明。 コーヒー豆+64%、家賃32年ぶりの上昇など、生活実感に近い品目はまだ高い。下がったのは補助金や無償化で抑えた品目が中心。
  • ③ 4月以降がカギ。 電気・ガス補助金の終了で物価上昇率は再び押し上がる方向。高校授業料や給食費の無償化による下押しもある。日銀の利上げ時期は4月説から7月説まで割れている。

よくある質問(FAQ)

Q1. 東京23区の消費者物価が2%を下回ったのはなぜ?

電気・ガス代の補助金とガソリン暫定税率の廃止でエネルギー価格が9.2%下落し、物価全体を押し下げた。

Q2. コアCPIとコアコアCPIの違いは?

コアCPIは生鮮食品を除いた物価指数。コアコアCPIはさらにエネルギーも除き、物価の実力を映す指標。

Q3. 物価上昇率が下がれば生活は楽になる?

上昇率の鈍化は値上がりペースが緩んだだけで、値段自体は下がっていない。食料品は依然+5.5%の高水準。

Q4. コーヒー豆がこれほど高い原因は?

主要産地ブラジルやベトナムの天候不良により世界的に供給が減り、前年比64%の上昇となった。

Q5. 電気・ガス代の補助金はいつまで続く?

2026年3月使用分で終了予定。3月は補助額が縮小され、4月以降は補助なしに戻る見込み。

Q6. 日銀の次の利上げはいつ?

専門家の見方は4月・7月・年後半と割れている。コアコアCPIの堅調さから利上げ路線自体は維持される見通し。

Q7. 実質賃金はプラスになる?

物価鈍化を主因に2026年1〜3月に実質賃金がプラスに転じる見通し。購買力の回復が期待される。

Q8. 4月以降の物価はどうなる?

補助金終了で上昇圧力が戻る一方、高校授業料無償化や給食費無償化が下押し。2%前後で推移する見込み。

Q9. 家賃が32年ぶりの上昇率とはどういうこと?

東京の民営家賃が前年比+2.2%で、1994年2月以来の高い伸び。賃金上昇や建築コスト増が背景にある。

Q10. 減量値上げとは何?

価格は据え置きのまま内容量を減らす手法。菓子類などで広がっており、見えにくい実質的な値上げとなる。

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リアルタイムニュースNAVI 編集部

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