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「人が足りず、仕事を断る」。
運送会社の倒産が止まらない。
帝国データバンクが2026年4月8日に発表した2025年度の道路貨物運送業倒産件数は321件だ。
前年度の351件から減少したものの、過去4番目の高水準である。
ではなぜ件数は減ったのに「高止まり」なのか。
データが浮き彫りにするのは「荷物はあるのに運べない」という構造的危機だ。
この記事でわかること
倒産件数は321件、前年度比30件減も「過去4番目の高水準」
件数は減った。
だが「改善」とは言えない。
過去4番目の高水準という事実が、業界の構造的課題を如実に示している。
「2024年問題で運送業の倒産は急増している」と思っていないだろうか。
確かに2024年度は351件と過去2番目の高水準だった。
しかし2025年度は321件と、前年度から30件減少したのだ。
帝国データバンクの調査によれば、過去最多はリーマン・ショック直後の2008年度371件。
次いで2024年度351件、2009年度341件と続く。
「減少≠改善」:過去4番目の高水準が示す構造的課題
表面的な数字だけ見れば「減少」である。
だが2000年以降で4番目に多い水準という事実は重い。
リーマン・ショックという世界的金融危機と、2024年問題という制度変更。
この二つの波が立て続けに業界を襲っている構図が浮かぶ。
帝国データバンクの全業種集計では、2025年度の倒産件数は1万425件と前年度比3.5%増だった。
運輸・通信業全体では457件で、道路貨物運送業がその約7割を占める。
1日約0.9社が倒産──帝国データバンク調査より
1日あたり約0.9社。
ほぼ毎日、日本のどこかで運送会社が倒産している計算だ。
ではなぜ、倒産件数は減少したのに「高止まり」と言われるのか。
その答えは人手不足と燃料高騰という二重苦にある。
「荷物はあるのに運べない」— 人手不足倒産55件、燃料高騰が追い打ち
2025年度の道路貨物運送業倒産で最も深刻な要因は「人手不足」だ。
業種別最多の55件に上る。
帝国データバンクによると、人手不足を要因とする倒産は全業種で441件と過去最多を記録した。
うち道路貨物運送業は55件。
全体の12.5%を占め、業種別で最多となった。
さらに2025年度上半期(4〜9月)の人手不足倒産は33件。
前年同期の19件から急増しており、下半期にかけてさらに加速した形だ。
なぜこれほど人手不足が深刻なのか
2024年4月から適用された時間外労働の上限規制。いわゆる「2024年問題」の影響が大きい。
ドライバー1人あたりの走行可能距離が減少し、運べる荷物の総量が目減りした。
荷主から「運んでほしい」という依頼はある。
だが「人が足りず、受注を断らざるを得ない」——そんな運送会社が増えている。
TDB分析「一定の物流ニーズがありながらも受注をさばききれていない」
帝国データバンクの分析はこう指摘する。
「現在は一定の物流ニーズがありながらも、人手不足から受注をさばききれていない」
人手不足に追い打ちをかけるのが燃料価格の高騰だ。
中東情勢の緊迫化により、軽油価格は一時1リットル180円に迫る水準まで上昇した。
大型トラックの燃料タンク容量は約400リットル。
満タン給油で約7万2千円と。1回の給電で数万円単位の負担増となる(出典:TDB公式レポート)。
物価高を要因とする倒産も全業種で963件発生。
道路貨物運送業は91件で9.4%を占めた。
一方で、明るい兆しも見え始めている。
東京商工リサーチの調査では、2025年度上半期の道路貨物運送業倒産は163件と。前年同期比15.1%減だった。
5年ぶりに前年を下回ったことになる。
TSRはこの減少要因を「価格転嫁の浸透」と分析する。
同調査によれば、価格転嫁できた企業の割合は85.8%に達したという。
TDB「人手不足倒産」
33件
(上半期・人手不足要因のみ)
TSR「全体倒産」
163件
(上半期・全要因)
※両者は集計対象が異なるため単純比較はできません。
同じ「高水準」でも、リーマン・ショック時とは倒産の質が根本的に異なる。
この違いこそ、今後の業界の行方を占う鍵となる。
リーマン時は「荷物がない」、今は「人がいない」— 構造的危機の深層
リーマン時=「需要減少型」倒産。
現在=「供給制約型」倒産。
この違いは決定的だ。
過去最高の倒産を記録した2008〜2009年と現在。
この二つの危機は、一見似て非なるものだ。
帝国データバンクは両者の違いを明確に指摘する。
リーマン・ショック時は「軽油価格の高騰によるコストアップ」に加えた。「荷動きの停滞」が収益を直撃した。
簡単に言えば、リーマン時は荷物がなくて倒産したのである。
ところが現在はどうか。
「一定の物流ニーズがありながらも。人手不足から受注をさばききれていない」(出典:TDB公式レポート)。
つまり「荷物はあるのに運べない」のだ。
危機の本質は「需要減少」から「供給制約」へ
需要減少型であれば、景気回復とともに荷動きが戻った。倒産は自然と減っていく。
しかし供給制約型は違う。
景気が良くなり物流ニーズが増えても、ドライバー不足という構造問題は短期で解決しない。
むしろ「運びたいのに運べない」機会損失が拡大し、倒産リスクはくすぶり続ける。
TSR調査で明らかになった「価格転嫁の浸透」は確かに光明だ。
運賃適正化の動きは徐々に広がっている。
だがそれでも追いつかないコスト増と人手不足の重圧がある。
帝国データバンクは今後の見通しについて「高水準で推移する可能性が高い」と分析する。
ドライバー不足は少子高齢化や労働環境の問題と密接に絡み合っておった。抜本的な解決には時間がかかるだろう。
では、私たちにできることは何か。
荷主企業には、適正運賃の支払いと長時間待機の解消が求められる。
消費者には「物流なくして生活なし」という認識が必要だろう。
運送会社の倒産は、決して対岸の火事ではないのだ。
2025年度道路貨物運送業倒産の要点
- 2025年度倒産件数は321件:前年度351件から減少したが、過去4番目の高水準で「高止まり」状態が続く
- 人手不足倒産が業種別最多の55件:2024年問題の影響で「荷物はあるのに運べない」構造的危機が深刻化
- 燃料高騰が追い打ち:軽油価格は一時180円/Lに迫り、中小事業者の経営を圧迫
- リーマン時とは質的に異なる危機:需要減少型ではなく供給制約型。景気回復だけでは解決しない
- 価格転嫁は進むも道半ば:TSR調査で85.8%が転嫁できた一方、コスト増に追いつかない実態がある
物流は経済の血流である。
その血流が滞り始めているという事実を、私たちは重く受け止める必要があるのではないか。
よくある質問(FAQ)
Q1. 2025年度の道路貨物運送業の倒産件数は何件ですか?
帝国データバンク発表で321件。
前年度351件から減少も過去4番目の高水準。
Q2. 道路貨物運送業の倒産が増えている理由は何ですか?
最大要因は人手不足。
ドライバー不足で受注をさばけず売上減に直結する。
Q3. 道路貨物運送業の人手不足倒産は何件発生しましたか?
2025年度は55件。
全業種441件中12.5%を占め業種別最多。
上半期は33件。
Q4. 道路貨物運送業の物価高倒産は何件ですか?
91件発生。
全業種963件中9.4%を占める。
軽油価格高騰が主因。
Q5. 道路貨物運送業の倒産件数が過去最高だったのはいつですか?
2008年度の371件。
次いで2024年度351件、2009年度341件と続く。
Q6. 2025年度上半期の道路貨物運送業倒産件数は?
TSR調査で163件。
前年同期比15.1%減で5年ぶりに減少した。
Q7. 2024年問題とは何ですか?倒産とどう関係しますか?
2024年4月施行の時間外労働規制。
ドライバー走行距離減で売上減少に直結。
Q8. リーマン・ショック時と現在の倒産は何が違いますか?
当時は荷物減少が原因。
現在は荷物はあるが人手不足で運べない構造的危機。
Q9. 運送業界で価格転嫁は進んでいますか?
TSR調査で85.8%の企業が転嫁できたと回答。
しかしコスト増に追いつかず。
Q10. 今後の道路貨物運送業の倒産動向はどうなりますか?
TDBは「高水準で推移する可能性が高い」と分析。
人手不足は構造問題。
リアルタイムニュースNAVI 編集部
reaitimenews.com
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📚 参考文献
- 帝国データバンク「道路貨物運送業の倒産、前年度を下回るも高水準続く」(2026年4月8日)
- 帝国データバンク「2025年度倒産集計」(2026年4月8日)
- 東京商工リサーチ「2025年度上半期『道路貨物運送業』倒産状況」(2025年10月)
- 帝国データバンク「2025年度上半期人手不足倒産動向」(2025年10月6日)
- LNEWS「道路貨物運送業の倒産、高水準続く 2025年度321件」(2026年4月9日)
- tdb.co.jp
- news.yahoo.co.jp
- mainichi.jp