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山形県職員2人が懲戒免職──25万円の不正で「免職」になった理由

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| 読了時間:約10分

「親族が死んだ」と偽り有給休暇を不正取得、ガソリンスタンドで15年間タダ洗車──山形県職員2人が懲戒免職となった。

 

2026年2月10日、山形県は庄内総合支庁の20代男性職員と県土整備部の50代男性技能労務職員に対し、懲戒免職処分を行った。

 

20代職員は医師の診断書を自分で偽造してまで特別休暇を不正に取り、50代職員は駐車場の定期券不正使用に加え、少なくとも15年にわたりガソリンスタンドで無償洗車を強要していたという。

 

不正に受け取った金額は25万円3万7千円
この金額で、なぜ最も重い免職処分に至ったのか。

 

2人の不正行為の全貌と発覚の経緯、そして人事院の指針が示す処分基準から、今回の免職処分の意味を読み解く。

 

 

 

 

 

山形県職員2人の不正行為の全貌──診断書偽造の20代と15年間洗車タダ乗りの50代

山形県の公式プレスリリースによると、2026年2月10日付で懲戒免職となったのは庄内総合支庁の20代男性職員と、県土整備部の50代男性技能労務職員の2人。同じ日に免職されたが、不正の中身はまるで違う。

 

20代職員の手口は巧妙だった。
自分の体調不良を装って取る「私傷病休暇」、父親の看護を理由にした「家族看護休暇」、祖父や母親が死亡したとして取る「忌引休暇」と、有給の特別休暇を3種類も使い分けていた。

 

不正取得した休暇の内訳

朝日新聞の報道によると、期間は2024年4月から2025年9月にかけて。
内訳は忌引休暇7日、私傷病休暇3日、家族看護休暇8日
合計18日と6時間15分──土日を除くと約3週間半の勤務日数に当たる。
この間に受け取った給与は約25万円にのぼった。

 

しかも、休暇の取得に必要な医師の診断書を自分で偽造して提出していた。
県の公式発表でも「医師の診断書を偽造して提出するなどして、虚偽の申請を常習的に繰り返し」と明記されている。

 

では、なぜバレたのか。

 

YBC山形放送の報道によると、きっかけは2025年に「母親が亡くなった」として忌引休暇を申請したとき。
葬儀の案内状など必要な情報が出てこなかった。

 

朝日新聞はさらに詳しく、偽造した診断書の様式が通常のものと異なっていたことも報じている。
つまり、偽造の精度が高かった実際には様式が不自然で、甘い偽造だったのに一定期間見抜けていなかった

 

上司が問い合わせると、本人はあっさり不正を認めた。
動機について「年次有給休暇が少なくなってきたのでやってしまった。仕事やプライベートで悩みがあり、出勤したくなかった」と話したという。

 

 

 

 

一方、50代職員の不正はまったく別の性質を帯びている。

 

県の発表によれば、この職員は2025年10月、自家用車1台分として契約した山形市営駐車場の定期駐車券を使い、親族の車や公用車まで含めた複数台を同時に駐車する不正を繰り返した。
延べ29日間、支払いを免れた金額は3万7,200円

 

だが、駐車場の不正よりもはるかに根深い問題が別にあった。

 

15年間の洗車タダ乗り

公用車に給油しているガソリンスタンドで「事業者の関係者と親しい」と従業員に伝え、少なくとも15年にわたり自分の車の洗車をタダでやらせていた。
スタンドの経営者と懇意であることをちらつかせ、従業員に断れない状況をつくっていたのだ。

 

公用車の給油という取引関係がある以上、従業員が県職員の要求を拒むのは難しかっただろう。
さらに公務中の職務離脱や公用車の私的利用も行っていた。

 

こちらの発覚は2025年12月末、県に届いた匿名の告発メールがきっかけだった。
上司が問い詰めると、不正を認めたという。

 

20代職員「逃避型」

出勤したくない心理から
休暇制度を悪用

50代職員「悪用型」

公務員の立場と取引関係で
民間に無償サービスを強要

 

どちらも最も重い免職という結論は同じだが、そこに至った道筋はまるで異なる。

 

ここで一つの疑問が浮かぶ。
人事院の懲戒処分指針では、休暇の虚偽申請に対する標準的な処分は「減給又は戒告」にすぎない。
なぜ今回は最も重い免職に踏み切ったのか。

 

 

 

 

なぜ「減給」ではなく「免職」なのか──人事院指針の標準量定を超えた3つの加重事由

25万円の不正受給で懲戒免職は厳しすぎるのではないか。そう感じた人は少なくないはずだ。

 

実際、人事院の懲戒処分指針を見ると、「病気休暇又は特別休暇について虚偽の申請をした職員は、減給又は戒告とする」と書かれている。
戒告は口頭や書面での注意、減給は給料を一定額カットする処分で、いずれも職を失うものではない。

 

ところが今回は、その標準を大幅に飛び越えて免職になった。

 

なぜか。答えは、同じ指針の中にある。
人事院指針は「標準例に掲げる処分の種類より重いものとすることが考えられる場合」として、いくつかの加重事由を挙げている。
今回の事案に当てはまるのは、主に3つだ。

 

加重事由①:態様の悪質性

指針は「非違行為の動機若しくは態様が極めて悪質であるとき」を加重事由としている。
20代職員は単に嘘をついたのではなく、医師の診断書を自分で偽造した。
これは公文書偽造に近い行為であり、休暇申請の虚偽とは次元が違う。

 

加重事由②:複数の非違行為の併合

指針は「処分の対象となり得る複数の異なる非違行為を行っていたとき」も加重事由に含めている。
20代職員の場合、休暇の虚偽申請、診断書偽造、給与の不正受給という3つの非違行為が重なっている。
50代職員に至っては、駐車場の不正利用、職務離脱、公用車の私的利用、民間事業者への洗車強要と、4つ以上が併合されていた。

 

加重事由③:常習性

県の公式発表でも「虚偽の申請を常習的に繰り返し」と明記されており、一度きりの過ちではなかったことが処分を重くした。

 

つまり、金額の大小が処分の重さを決めるのではない
「何をやったか」の質と、「どれだけ繰り返したか」が免職の分かれ目になる。

 

 

 

 

ほかの自治体でも似た構造が見える。

 

横浜市水道局の事例では、2025年12月に50歳の職員が懲戒免職となった。
病気休暇の申請書を改ざんして通算30回41日2時間の休暇を不正に取り、給与約290万円を不正受給していた。
金額は山形の10倍以上だが、処分は同じ免職だ。

 

山形県(20代職員)

約25万円 → 免職

横浜市(50歳職員)

約290万円 → 免職

 

金額の差は大きいが、両者に共通するのは「書類の偽造・改ざん」と「常習的な繰り返し」。
この2つが揃うと、金額にかかわらず免職に至る──人事院指針の構造はそう読み取れる。

 

懲戒免職となれば、当然ながら退職金の問題が浮上する。
さらに今回の事案は「なぜもっと早く発覚しなかったのか」という組織の問題も突きつけている。

 

 

 

 

退職金はどうなるのか?──懲戒免職が突きつける「その後」と、15年間見抜けなかった組織の問題

懲戒免職を受けた公務員に退職金は出るのか。あなたの職場では忌引休暇の申請にどこまでの確認が求められるだろうか。

 

まず退職金について。
懲戒免職の場合、退職手当の全額または一部が不支給となるのが通例だ。

 

国家公務員退職手当法では、懲戒免職を受けた職員に対して退職手当支給制限処分たいしょくてあてしきゅうせいげんしょぶんを行うと定めており、地方公務員もこれに準じた条例を持つ自治体がほとんどだろう。
20代の若手職員であれば勤続年数が短く退職金の額はさほど大きくないが、50代職員にとっては定年まで数年を残しての免職であり、影響はより深刻だと見られる。

 

⚠️ ここからは推測です

有印私文書偽造・同行使罪への該当については、県は現時点で刑事告訴に言及していない。
20代職員の不正受給分約25万円については県が返還を求める方針であり、50代職員の駐車場不正利用額3万7,200円はすでに支払い済みだ。
ただし15年間の無償洗車の金銭的被害額がどう扱われるかは明らかになっていない。

 

見落とせないのは、不正をした当人だけでなく、管理監督者も処分を受けている点だ。

 

県のプレスリリースによると、20代職員の上司に当たる産業労働部の60代補佐級職員が文書訓告、庄内総合支庁の50代課長級職員が厳重注意を受けた。
50代職員の上司である県土整備部の50代課長級職員も厳重注意となっている。
県は個人の問題で片づけず、組織としての監督責任も問うた。

 

では、なぜこれほどの不正が長期間見抜けなかったのか。

 

 

 

 

20代職員のケースでは、偽造した診断書の様式が通常と違っていた。
朝日新聞の報道によれば、葬儀明細など忌引休暇に必要な書類も不備があった。
それでも不正が約1年半にわたって続いた。
書類の形式チェックが組織として徹底されていなかったと言わざるを得ない。

 

50代職員の洗車強要に至っては15年間だ。
公用車の給油先という取引関係の中で、スタンドの従業員は県職員の要求を拒めなかったのではないか。
公務員という肩書が取引先に対して持つ影響力は、当人が自覚する以上に大きいものだろう。
この構造的な力の非対称が、15年もの間、不正を温存させたと見ることもできる。

 

結局、この不正を止めたのは組織内のチェック機能ではなく、匿名の告発メールだった。

 

県は「このような職員の不祥事は遺憾であり痛恨の極み。職員の綱紀保持と再発防止に努める」とコメントした。
忌引休暇の申請時に葬儀証明の提出を厳格化するなど、制度的な手当てが今後行われるのではないだろうか。

 

 

 

 

まとめ

  • 2026年2月10日、山形県は庄内総合支庁の20代男性職員と県土整備部の50代男性技能労務職員を懲戒免職とした
  • 20代職員は医師の診断書を偽造し、忌引休暇・私傷病休暇・家族看護休暇を不正に取得。18日と6時間15分で約25万円を不正受給した
  • 50代職員は駐車場の定期券不正使用のほか、15年間にわたりガソリンスタンドで無償洗車を強要していた
  • 人事院指針では休暇虚偽申請の標準量定は「減給又は戒告」だが、態様の悪質性・複数非違行為の併合・常習性の3つの加重事由により免職に至った
  • 管理監督者も処分を受けており、組織のチェック体制の見直しが求められる

 

よくある質問(FAQ)

Q1. 公務員の休暇の不正申請はどうなるのか?

人事院指針では「減給又は戒告」が標準。ただし偽造や常習性があると免職まで加重される。

Q2. 山形県職員2人はなぜ懲戒免職になったのか?

診断書偽造・常習的な虚偽申請・複数の非違行為の併合という3つの加重事由に該当したため。

Q3. 懲戒免職になった職員の実名は報道されるのか?

山形県は年代・性別・所属のみ公表。今回は実名は公表されていない。

Q4. 懲戒免職になると退職金はもらえないのか?

退職手当の全額または一部が不支給となるのが通例。国家公務員退職手当法に準じた条例で定められている。

Q5. 山形県職員の不正はどうやって発覚したのか?

20代職員は忌引休暇の葬儀情報が出なかったこと、50代職員は匿名の告発メールがきっかけ。

Q6. 診断書偽造は刑事罰の対象になるのか?

有印私文書偽造・同行使罪に該当する可能性があるが、県は現時点で刑事告訴に言及していない。

Q7. 忌引休暇の不正取得はどうやって見抜くのか?

葬儀の案内状・死亡届の提出を求めることで防止できる。今回は書類の不備から発覚した。

Q8. 15年間の洗車強要はなぜ発覚しなかったのか?

公用車の給油先という取引関係の中で、従業員が県職員の要求を断りにくい構造があったとみられる。

 

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リアルタイムニュースNAVI 編集部

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