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円が163円台、有事なのに買われない理由

| 読了時間:約5分

「有事なのに円が買われない」——これ、実はもう普通になっている。

2026年7月21日夜、円は1ドル= 163円 台まで下落した。
1986年12月以来、約39年7カ月ぶりの安値 である。

市場で優勢だったのは「有事のドル買い」だった。

中東で米国とイランの戦闘が激しくなる中、投資家が逃げ込んだのは円ではなく、ドルのほうだ。

中東緊迫と原油高、そして FRB (アメリカの中央銀行にあたる組織)の利上げ観測——この3本が同時に走り、しかも4〜5月に投じた 11兆7000億円 の介入は 2カ月余りで帳消し になった。

戦争リスクなら円が買われるはず。

そう思ったあなたは、いまの円が何から外されたのかを、まだ知らないだけかもしれない。

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円が163円台、有事なのに買われない理由

163円台の裏で走った3つの引き金

日本時間 21日夜11時半、円が音もなく163円を割った

ニューヨーク外国為替市場で、対ドルの円相場は一時1ドル= 163円 台まで下落した。
1986年12月以来、約39年7カ月ぶりの円安ドル高水準 である。

テレ朝news によれば、その瞬間は日本時間の21日午後11時半頃だった。

市場が薄くなる深夜帯に、静かに壁が抜けた形になる。

ここで走った3本の引き金を、規模感を並べて見てみる。


10
中東
米イラン戦闘連続
83 ドル
原油
WTI先物・高止まり
利上げ
FRB
追加観測が拡大

引き金の1本目は 中東 だ。

米国とイランの戦闘が10日連続で伝えられ、緊迫は日ごとに濃くなっていた。

ここに、イエメンの反政府勢力 フーシ派 がサウジアラビアの船舶を対象に紅海での「海上封鎖」を宣言したというニュースが重なる。

2本目は 原油 だ。
読売新聞オンライン は、フーシ派の海上封鎖宣言によって原油価格が上昇したと伝えている。

原油を輸入に頼る日本の貿易収支が悪化するとの見方が広がっている、というのが 円売りの背景 である。

3本目はFRBだ。
テレ朝news によれば、原油高がインフレ再燃への懸念につながり、FRBによる利上げ観測が強まった。

日米の金利差が広がる予感が、そのままドル買い・円売りの燃料になった。
3本が同時に走った。

その合流点が、あの深夜の 163円台 である。

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では、この場面で誰もが口にした「有事のドル買い」とは、そもそも何を指す言葉なのか。

「有事のドル買い」って結局なに

戦争が起きるとドルが買われる—— これは経験則の名前だ

用語の中身を、証券会社の解説からそのまま拾っておく。

有事のドル買い

戦争などが起こった場合(=有事と呼ぶ)、為替相場がどう動くか分からないので、そのようなときには流動性のある米国の通貨であるドルを買っておけば安心だ、という経験則。

ただし、相場は様々な要因で変動するので、常時見られる現象であるとは限らない( 野村證券 証券用語解説集 より)。

理屈というより、市場が長年繰り返してきた 「とりあえずの避難行動」 に近い。

ただし、この経験則は常に成り立つわけではない。
iFinance 金融経済用語集 は、有事のドル買いに 1991年の湾岸戦争以降は陰りが見られ、2001年の米国同時多発テロを契機に大きく変わった と解説している。

有事がドルにとって有利に働くのか、不利に働くのか——その事情次第でドル相場は揺れてきた。

つまり「有事のドル買い」は、法則ではなく、その時々の力学で強く出たり弱く出たりする経験則である。

今回は米国とイランという当事者構図で、ドルにとって「安全側」に力が働いた稀な局面だった、というのが素直な読み方だろう。

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経験則としてドルが選ばれる——では、同じく安全通貨と呼ばれてきた円は、今回なぜ選ばれなかったのか。

有事なのに円が買われない理由

中東で戦火が広がる中、 円は買われず売られた

かつては「有事の円買い」も語られた。

日本が世界有数の対外債権国であり、有事のときは日本の投資マネーが自国に戻ってくるとされ、円は避難先のひとつだった。

ところが今回、その動きはほとんど観測されていない。
FNNプライムオンライン が伝えたところによれば、市場では比較的安全な通貨とされるドルを買う動きが優勢で、 円は選ばれる側に立てなかった

ここで、かつての「有事の円買い」と、今回の「有事の円売り」を並べておく。


円売り
今回・避難先から外された
ドル買い
基軸通貨・流動性が支持

理由はいくつか重なる。
1つは 日米金利差 の広がりだ。

米国は高金利、日本は緩やかな利上げペース。

この差が続く限り、投資マネーは金利が高いドルへと流れやすい。

もう1つは原油だ。

原油を輸入に頼る日本は、原油高が貿易収支の悪化に直結する。

有事が原油高を呼び、原油高が円売りを呼ぶ。
この経路は、有事のたびに円が売られる素地になる

言い換えれば、円は「戦争リスクのときに買っておけば安心な通貨」の棚から外されつつある、ということだ。

日米金利差が構造として居座り、有事の局面でも円が避難先として選ばれなくなっているという見方が広がっている。

「有事の円買い」は昔話に近づき、代わりに 「有事の円売り」の側面が目立つようになった

円が避難先から外されたなら、4〜5月に行われた過去最大の介入は、いま何を残しているのか。


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11.7兆円がたった2カ月で消えた

11兆7000億円

しかし 2カ月で介入前水準を超えた

2026年4〜5月にかけて、政府・日銀は総額約 11兆7000億円 規模の為替介入を実施した、と伝えられている。

円が160円台後半まで下落した局面で、円を買い・ドルを売る方向にぶつけた大掛かりな一撃だった。

ところが2カ月余り経った今、円相場は163円台に届いている。

介入前の水準を追い越したかたちだ。

BigGoファイナンス は、この状況を 「介入効果は完全に帳消しになった」 と伝えている。

介入前後の水準を、Before/Afterで並べておく。

160円台後半
4〜5月介入前の水準
163円台
2カ月余りで到達

規模の感覚を、家計の目線に翻訳しておく。

11兆7000億円 ÷ 約1.24億人 ≒ 約9.4万円 /人

単純計算で1人あたり約9.4万円分の外貨準備をぶつけた計算

1人9.4万円のカードを切って、 2カ月で相場は元より悪くなった ——そう並べると、介入のスケールと結果のギャップが具体的に見えてくる。

なぜ効かないのか。
為替介入 (政府・日銀が円やドルを市場で大量に売買して、行き過ぎた動きにブレーキをかける措置)は「過度な変動や無秩序な動き」を一時的に抑えるための手段で、日米金利差という構造要因を反転させる力はないとされる。

ドルを買いたい理由(高い金利・原油高・貿易赤字の観測)が消えていない以上、投資家は介入で作られた円高の局面を「安く買い戻すチャンス」として使ってしまう。
介入は雨をやませる装置ではなく、あくまで一時的に流れをせき止めるダム 、と考えると腑に落ちる。

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介入でも止まらない円安——では、この163円は、あなたの生活にいくらの形で届くのか。

あなたの財布に163円が届く日

同じiPhoneが150円時代より 1万円以上 高い。

1ドル150円の頃と、1ドル163円の今。

同じ999ドルのスマートフォンを買うと、単純計算で価格差は約1.3万円になる。

999ドル × 13円 = 1万2987円

150円→163円で1台あたり約1.3万円の実質値上げ

円換算では14万9850円から16万2837円へ、 実質1万円超の値上げ が起きているのと同じだ。
1ドル110円時代なら約10.99万円だったことを思うと、この5年ほどで同じ端末が 5万円以上 重くなった計算になる。

家計に届くルートはスマートフォンだけではない。

原油や小麦、飼料など、輸入に頼るコストは為替と連動して上がる。

この波が電気・ガスの料金や食品の店頭価格に反映されるまでには、契約の切り替え時期や在庫の入れ替えを挟むぶん、 数週間から数カ月のタイムラグ があることが多い。

読者影響を、観察できる形に分けておく。

  • 8月以降の電気料金・ガス料金の明細
  • 輸入ブランド品・海外家電の値札
  • スーパーの輸入食材・小麦製品の価格改定
  • 外貨建て資産・新NISAの評価額の動き

海外旅行や輸入ブランドの買い物のように、その場でドル建てを円換算する場面では、円安はもっと即座に効く。

同じ1杯のコーヒーが去年より高い、同じホテルが去年より高い。

旅行先で電卓を叩くたびに 「163円」という数字に会いに行く ことになる。

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163円という数字は、遠い為替市場の話ではなく、次の月の請求書と値札に静かに書き込まれていく。

まとめ

  • 2026年7月21日夜、NY市場で円が一時1ドル=163円台まで下落し、1986年12月以来約39年7カ月ぶりの安値をつけた
  • 引き金は中東緊迫(米イラン戦闘・フーシ派の紅海海上封鎖宣言)・原油高・FRB利上げ観測の3本が同時に走ったことだった
  • 「有事のドル買い」は法則ではなく経験則で、湾岸戦争以降は陰りが見られると野村證券系の解説にも記されている
  • 4〜5月に投じた約11兆7000億円(単純計算で1人あたり約9.4万円)の介入効果は、2カ月余りで介入前の水準を超えて消えた
  • 1ドル150円→163円で、同じ999ドルのスマホは単純計算で約1.3万円の実質値上げになる

「有事なら円が買われる」は、いま起きているこの相場ではもう働かない前提として動くほうが、生活にも投資判断にも近道になる。

よくある質問(FAQ)

Q1. ドル円が163円台まで進んだのはなぜ?

米イラン戦闘の激化とフーシ派の紅海海上封鎖宣言、原油高、FRBの利上げ観測が同時に重なり「有事のドル買い」が優勢になったためです。

Q2. 「有事のドル買い」ってどういう意味?

戦争などの有事のときに、世界の基軸通貨である米ドルを買っておけば安心という経験則です。

常に成り立つ法則ではありません。

Q3. なぜ有事なのに円ではなくドルが買われた?

日米金利差が広く、原油輸入国の日本は原油高で貿易収支の悪化が意識されるため、円は避難先として選ばれにくくなっているという見方が広がっています。

Q4. 4〜5月の11.7兆円介入の効果はどうなった?

BigGoファイナンスの報道によると、今回163円台まで進んだことで介入前の水準を超え、効果は完全に帳消しになったとされています。

Q5. 163円の円安は家計にいくら響く?

1ドル150円時代と比べ、999ドルのスマホは単純計算で約1.3万円高くなります。

電気・ガスや食品には数週間〜数カ月の時差で反映されるのが一般的です。

Q6. 政府・日銀は163円台で為替介入に動く?

テレ朝newsは市場で介入警戒が強まっていると伝えていますが、水準そのものは当局が公言せず、無秩序な動きを判断基準にするのが公式スタンスです。

📚 参考文献

N

リアルタイムニュースNAVI 編集部

reaitimenews.com

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