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カードを使った客の支払いが、店に1円も入らないまま消えた。
2026年7月6日、クレジットカードの決済代行会社「全東信」(大阪市中央区)が大阪地裁に自己破産を申請し、同日に破産手続きの開始決定を受けた。
負債は約
1259億円
。
今年最大の倒産だ。
全国で
20万店
が使っていた「入金の命綱」が一夜で止まったが、このニュースには表から見えない構造がある。
「飲食店向け」と書かれていた会社の加盟店の
7〜8割
は、実は通常のカード審査を通れない夜の業態だったとされる。
あなたの売上金は今どこにあるのか。
そして次の決済手段は本当に存在するのか。
この記事でわかること
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全東信は何をしていた会社か
カードを使った客の売上が、通常なら翌月末にしか入らないのに、 全東信 なら週 2 回口座に振り込まれていた。
これが同社の看板サービス「全東信決済システム」の中身だ。
カード会社が加盟店に支払う売上代金を全東信が先に立て替え、店側に早期入金する。
その手数料が収入源だった。
東京商工リサーチ
によると、
業界初となる週2回・月6回という早期入金サイクル
を武器に事業を拡大した。
この仕組みが飲食店に刺さった理由は、資金繰りの問題だ。
飲食店は毎日食材を仕入れ、毎月家賃と人件費を払う。
しかしカード払いの売上が翌月末まで入らなければ、現金が先に不足する。
全東信はその穴を埋める存在だった。
早期決済代行(PSP)とは
「Payment Service Provider」の略。
カード会社と店舗の間に入り、決済処理を代行する会社のこと。
全東信の場合は「立替払い」が核心で、カード会社からの入金を待たず先に店へ現金を届けるビジネスモデルだった。
実は同社のルーツは
1987
年にある。
大阪ミナミの歓楽街にあった飲食店や風俗店の経営者たちが「お互いに助け合おう」と作った
「大阪南飲食事業協同組合」
が前身だ。
90年代にアメリカン・エキスプレスをはじめとする国際ブランドとの提携でカード決済を始め、
1999
年に「全東信飲食事業協同組合」へと名を変えて全国展開をスタートした。
2006
年9月に株式会社化し、資本金
45億円
の企業となった。
帝国データバンク
によると、
2018
年9月時点で加盟店は
20万店
を超え、一時は月
2000
店以上のペースで新規契約が増えていた。
2020
年3月期の売上高は約
82億円
に達していた。
では、全国 20万店 ・売上 80億円 を誇った会社の負債が、なぜ資本金の 28 倍にまで膨らんだのか。
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資本金28倍の負債が生まれた理由
資本金
45億円
。
しかし負債は
1259億円
——その差は「
28倍
」という非常識な数字だった。
実はこの数字、「危ない経営」の象徴ではなく、
ビジネスモデルの構造そのもの
だ。
全東信が店舗に売上を立て替えるためには、自社に現金が必要だ。
しかし毎日全国
20万店
分のカード売上を自己資本だけで賄うのは不可能に近い。
そこで金融機関から相当額の借入を行い、その現金を店舗に流していた。
負債 1259億円 ÷ 資本金 45億円 ≒ 28倍
家賃10万円の人が、家賃280万円の部屋を借りているような状態
つまり全東信は「決済代行会社」の顔をした「
超高レバレッジ(借入過多)の金融ビジネス
」だったのではないか。
毎日何十億もの現金を全国の店に前払いし、カード会社からの回収で返済する。
この自転車操業が成立するには、取扱高を一定以上に維持し続けることが絶対条件だった。
帝国データバンク
によると、
2020
年3月期に約
80億円
あった売上は、
2021
年3月期に約
50億円
まで急減した。
2
期連続で大幅な赤字を計上している。
売上が4割近く消えても、借入の返済と金利は変わらない。
「稼ぎが減っても借金は減らない」——この構造が最初の致命傷となった。
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この綱渡り構造を支えるには「取扱高を維持し続けること」が絶対条件だった。
そこに、2つの出来事が重なる。
2年で事業を詰めた「2つの事件」
「通常であれば審査が通らない飲食店の加盟店契約を他人名義で結んだ」—— 2024 年1月、警視庁はその疑いで 全東信 の社員らを逮捕した。
第一の事件はコロナ禍だ。
2020
年以降、加盟店である飲食店が時短・休業を余儀なくされ、全東信の取扱高が一気に落ちた。
前述の通り売上は約
50億円
に急減し、金融債務の金利負担だけが残った。
コロナ禍が緩和された後も、業況の本格的な回復には至らなかった。
大阪南飲食事業協同組合として設立。
大阪ミナミの飲食・風俗店経営者の相互扶助組合が起源
資本金45億円で株式会社化。
東京・神奈川・大阪・九州を中心に全国展開
加盟店20万店超。
月2000店以上のペースで新規契約が増加
飲食店の時短・休業で売上が約80億円から約50億円へ急減。
2期連続大幅赤字
社員が不正加盟店契約で逮捕。
会社も組織犯罪処罰法違反の疑いで書類送検。
信用不安が表面化
大阪地裁に自己破産を申請し同日決定。
負債1259億円、今年最大の倒産
そこに追い打ちをかけたのが第二の事件だ。
帝国データバンク
によると、
2024
年1月に社員らが逮捕された後、全東信自体も
組織犯罪処罰法
違反の疑いで書類送検された。
不正を会社の業務として行っていた疑いが持たれたのだ。
ここで重要なのは「
書類送検=即倒産ではない
」という事実だ。
しかし金融機関には、コンプライアンス(法令遵守)違反が発覚した取引先への融資を見直す慣行がある。
これは金融庁の監督指針にも沿った業界の実態だ。
高レバレッジで動いている会社にとって、融資の引き揚げは事業の「血液」を止めることに等しい。
コンプライアンス違反後、信用不安が表面化するなか資金調達に支障をきたし、事業継続が不可能になったと考えられる。
ITmedia NEWS によると、負債 1000億円 以上の大型倒産は 2025 年 12 月以来 7 カ月ぶりの規模となった。
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だがここで一つ、見落とされている問いがある。
なぜ全東信は「審査が通らない業態を引き受ける」という商売を、
40
年間もやり続けられたのか。
「飲食店向け」の看板が隠していたもの
看板には「飲食店向け」と書かれていた。
だが加盟店の
7〜8割程度
は、キャバクラやホストクラブなど、
風俗営業許可
が必要な夜間業態だったとされる。
これが認知転換の核心だ。
ITmedia NEWS
は、この実態について「
7
〜
8
割程度とも言われる」という表現で伝えている。
推定の域を出ないが、もしこれが事実なら「 飲食店の駆け込み寺 」という公称は、実質的に「 夜の街専用インフラ 」の看板に近かったことになる。
なぜ夜の業態が全東信に集中したかには理由がある。
キャバクラやホストクラブは、大手カード会社の審査を通りにくい業種だ。
風俗営業許可が必要な業態は、リスク管理の観点からカード会社が加盟審査を厳しくする傾向がある。
そこで「審査の通らない業態を引き受ける」という
空白地帯に、全東信が40年かけて入り込んだ
とされる。
競合が存在しない空白地帯は、高い手数料収入をもたらす。
しかし同時に、
審査落ちした業態のリスクも独占的に抱え込む構造
でもある。
そしてもう一つの問題がある。
代替手段を持てない加盟店が特定のインフラに依存しきると、そのインフラが崩壊した瞬間に「逃げ場がゼロになる」。
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夜の店は全東信しか使えなかったから、全東信が潰れた瞬間に乗り換え先がそもそもない状態に陥ったのではないか。
「独占的な隙間ビジネス」と「加盟店の依存」が重なった結果、崩壊のダメージは通常の倒産より大きく膨らんだとも考えられる。
ルーツが「相互扶助組合」だったことを思い出してほしい。
大阪ミナミの夜の街の経営者同士が作った組合が出発点だったからこそ、
40
年かけて夜の業態との信頼関係を築けた。
その歴史が独占的な地位を生み、その独占が崩壊のダメージを何倍にも膨らませたのではないか。
では、今まさに加盟店の経営者が直面している「売上金はどこへ消えたのか」という問いに答えよう。
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加盟店の売上金は今どうなるか
「本日以降のカード決済は入金されない恐れがあります」—— 日本飲食団体連合会(食団連) が 7 月 6 日、緊急声明を出した言葉だ。
食団連
によると、破産手続きの開始により、全東信のクレジット端末は今後一切使えなくなる。
端末が動いていてもカードが通っても、
売上は店に入らない。
さらに、全東信が破産手続き開始前に立て替えていない未入金の売上金は、法律上「
破産債権
」(破産した会社への未回収の請求権)として扱われる。
通常の期限での支払いは受けられない。
⚠️ 端末が動いていても決済処理はできません。
今すぐ全東信の端末使用を停止してください。
特に深刻なのは資金繰りの問題だ。
週
2
回・月
6
回の早期入金を前提に仕入れや家賃を払っていた店は、入金サイクルが突然止まることで現金が不足する。
売上は上がっているのに支払いが追いつかない「黒字倒産」のリスク
が生じると考えられる。
これはキャッシュフロー管理で知られる財務リスクで、飲食業のような日々の現金支出が多い業種ほど直撃する。
今できることは次の3つだ。
資金繰りに不安がある場合、
ITmedia NEWS
によると、
日本政策金融公庫
のセーフティネット貸付(経営環境変化対応資金)の利用が選択肢となる。
さらに信用保証協会の別枠
100
%保証制度「
セーフティネット保証1号
」の活用も検討できるが、これには全東信が経済産業大臣の告示で「指定事業者」に認定される必要があり、
現在食団連が関係方面に働きかけているところだ。
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問題は「今日の対処」だけではない。
夜の街の決済インフラを、次に誰が担うのかという問いは、まだ誰も答えを持っていない。
夜の街が次に向かう場所
全東信がいなくなった今、 風俗営業許可 が必要な夜間業態の経営者が新しい決済代行と契約するには、高い壁が立ちはだかる可能性がある。
ITmedia NEWS
は、代替先として近年加盟店を増やしているのが
USEN
だと伝えている。
ただしSquareやAirペイといった一般向けのスマート決済端末は、
風営法業態の審査が厳しい傾向があるとされる。
夜間業態の経営者にとって、乗り換えには 1 〜 2 週間以上かかるケースも少なくないだろう。
その間、カード決済ができない期間が生まれる。
キャッシュレス決済の比率が高い店ほど売上の機会損失は大きくなる。
インバウンド客が多い店では特に深刻だ。
全東信の破産は一企業の倒産にとどまらない。
「審査を通れない業態」と「キャッシュレス化を求める社会」の間に生まれた隙間
を、
40
年かけて埋めてきた専門インフラが消えた。
次の誰かがその空白を埋めるまで、夜の街の決済は構造的な空白期間に入るのではないか。
便利なインフラは、それが消えて初めてどれだけの重さを支えていたかが分かる。
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まとめ
- 全東信の実態は「飲食店向け」ではなく、風営法業態(キャバクラ・ホストクラブ等)が加盟店の7〜8割を占めるとされる、夜の街の専用決済インフラだったとされる
- 「業界初・週2回入金」の原資は自己資本ではなく金融機関からの借入で、資本金45億円に対して負債は約1259億円(約28倍)という高レバレッジ構造だった
- コロナ禍で取扱高が激減した後、2024年1月の不正加盟店事件による書類送検が金融機関の融資姿勢を硬化させ、資金調達が断絶したと考えられる
- 加盟店の未入金売上は「破産債権」となり、通常の期限での回収は困難。食団連がセーフティネット保証1号の指定に向けて経済産業大臣告示を働きかけ中
- 代替となる夜間業態向けPSPは限られており、全東信という「独占的な隙間インフラ」の消滅は、単なる一社の倒産ではなく業界全体の構造的な空白を生む
よくある質問(FAQ)
Q1. 全東信とは何をしていた会社ですか?
飲食店などのクレジットカード売上を、カード会社より先に立て替えて入金する「早期決済代行」サービスを展開していた会社です。
業界初の週2回・月6回入金を武器に全国20万店以上と契約していました。
Q2. 全東信が破産したら、すでに決済した売上金はどうなりますか?
破産手続き開始前に受け取っていない売上金は「破産債権」となり、通常の期限での支払いは受けられません。
破産管財人の案内に従い債権届出の手続きが必要です。
Q3. 全東信の端末は今でも使えますか?
使えません。
破産手続き開始と同時に全端末のサービスは停止しており、端末が動いていてもカード決済の売上は入金されません。
今すぐ端末の使用を止めてください。
Q4. 全東信の破産で飲食店は今すぐ何をすればいいですか?
まず全東信の端末使用を即時停止し、未入金の売上金額を集計します。
証拠となる明細・契約書・入金履歴を保存し、資金繰りに不安があれば日本政策金融公庫のセーフティネット貸付に相談することをお勧めします。
Q5. 全東信はなぜ破産したのですか?
コロナ禍で加盟飲食店が休業し取扱高が激減したことと、2024年1月に不正加盟店契約で社員が逮捕・会社も書類送検されたことが重なり、金融機関からの資金調達が困難になったためです。
Q6. 全東信破産で配当(売上金の回収)は見込めますか?
破産管財人は「配当の見込みは限定的」としています。
未入金売上金は破産財団からの配当に依存しますが、全額回収できる可能性は低いとされています。
Q7. 全東信の代わりになる決済サービスはありますか?
USENが近年夜間業態向けの加盟店を増やしているとされています。
SquareやAirペイなど一般向けサービスは風俗営業許可が必要な業態の審査が厳しい場合があり、乗り換えに1〜2週間以上かかることもあるでしょう。
Q8. セーフティネット保証1号は全東信の被害店舗に使えますか?
利用には全東信が経済産業大臣の告示で「指定事業者」に認定される必要があります。
現在、日本飲食団体連合会(食団連)が指定に向けて関係方面に働きかけており、認定されれば信用保証協会の別枠100%保証付き融資が受けられる可能性があります。
📚 参考文献
- 東京商工リサーチ「(株)全東信 TSR速報」 (2026年7月6日)
- Yahoo!ニュース(帝国データバンク配信)「今年最大の倒産 クレジットカード売上の早期決済代行サービス「全東信」(大阪)が破産、負債額は約1259億2900万円」 (2026年7月6日)
- 日本経済新聞「クレジットカード決済代行の全東信が破産 負債1259億円」 (2026年7月6日)
- ITmedia NEWS「クレカ決済代行の全東信が破産、端末が使用不可に 負債は1259億円で今年最大──帝国データバンク」 (2026年7月6日)
- ITmedia NEWS「全東信、破産を招いた『2つの事件』 カード決済の"駆け込み寺"消滅が飲食店に与える影響とは」 (2026年7月7日)
- 日本飲食団体連合会(食団連)「【第2報】全東信破産に関する支援策のご案内」 (2026年7月7日)
- ITmedia NEWS「『全東信の端末使用を即時停止して』——食団連が飲食店へ注意喚起 全東信の破産受け」 (2026年7月7日)
- coki.jp
- jbc-ltd.com
- news.yahoo.co.jp
- x.com
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リアルタイムニュースNAVI 編集部
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