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告発者はクビ、不正認定の教授は出世——京都大学の研究不正逆転劇
京都大学生命科学研究科の小田裕香子教授が発表したJIPペプチド論文の改ざんをめぐり、内部告発した研究員A氏が告発からわずか約3ヶ月後に雇い止めを通知された一方、小田氏は調査進行中に教授へ昇進したことが2026年5月に報じられた。
なぜ研究不正の調査中に昇進が可能だったのか。
告発者を守る制度はなぜ機能しなかったのか。
この記事でわかること

「ラボを潰したいですか」告発者が見た実態
「 Aさんはラボを潰したいですか 」——この言葉が投げかけられた翌日から、研究室の空気は一変した。
「Aさんはラボを潰したいですか」——この言葉が投げかけられた翌日から、研究室の空気は一変した。
「本当は私個人で告発するのは避けたかった。
でも、JIP論文を根拠に多額の公的研究費が取得され、医療応用を見据えたさまざまな共同研究も進んでいる。
共著者として責任を感じ、科学者としても、気づいた以上はこの論文をそのままにしておくことはできないと思った」(A氏)
この記事でわかること
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「ラボを潰したいですか」告発者が見た実態
のちに設置された調査委員会は、A氏が受けた対応の多くを事実と認定した。
ただし、「ハラスメントには当たらない」との結論を下したとされる。
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この告発はやがて、大学組織の対応そのものへの疑問を呼び起こすことになる。
調査が進む中、准教授から教授へのスピード昇進
告発からわずか
約3ヶ月後
、A氏は
雇い止めを通知された
。
その直後、小田氏は
教授へ昇進した
。
告発・雇い止め・昇進の同時進行
- 2023年12月 :A氏が京大公正調査監査室へ告発
- 告発の 約3ヶ月後 :A氏に雇い止めを通知
- 2024年 :小田氏がiPS細胞研究所准教授から生命科学研究科教授へ昇進
- 2026年3月31日 :調査委員会が Fig.2A,B の改ざんを認定・公表
SlowNews(須田桃子)の報道
によると、小田氏が生命科学研究科教授へ昇進した当時の研究科長である井垣達吏氏は、小田氏と共同研究者の関係にあった。
さらに、井垣氏はJIPに関連する研究で
約1億8千万円
の研究費を取得していたとされる。
人事評価に関わる立場の研究科長が、被評価者と共同研究関係にあったとすれば、そこには利益相反の懸念が生じる構造があるとの指摘が出ている。
一方、調査委員会が改ざんを正式に認定したのは
2026年3月31日
であり、昇進から
1年以上後
のことだ。
時事ドットコムの報道
によると、大学は同論文について撤回ではなく訂正申請のみを求めた。
告発者が雇い止めとなり、不正を認定された側が教授に留まるという経緯は、大学の研究不正に対する姿勢への疑問を広げた。
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調査が進行中でも人事を止める仕組みが制度上存在しない場合、不正認定より昇進が先行するという事態が起きうる ——今回はその可能性を示す事例とも読み取れる。
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ならば、調査そのものはどこまで公正だったのか。
認定されなかった複数の改ざん疑義
調査委員会が公式に認定した改ざんはFig.2A,Bの1組のみだった。
しかし 内部資料を入手したSlowNewsの報道 によると、それ以外にも複数の疑義が内部で把握されていたとされる。
実験条件の思い込み
による改ざんのみ
Fig.4H,I 改ざん疑い
生物学的活性なし酵素使用
- Fig.3F,G / Fig.5E : 生物学的活性がないとして販売されている酵素を用いた実験——捏造の疑いが指摘されている
- Fig.4H,I : 論文に不都合なマウスの意図的除外、実験中に行方不明となったマウスの記録——改ざんの疑いが指摘されている
Wikipediaの小田裕香子の項
によると、これらの疑義についてはパブピア(PubPeer)上でも外部研究者から同様の指摘がなされていた。
外部有識者からは「もはや実験として成立していない」「研究不正以前の問題だ」との声が上がったとも伝えられている。
調査委員会がこれらを研究不正として認定しなかった経緯は、現時点では明らかになっていない。
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この選択的な認定の背景には、調査体制の構造が関わっているとみられる。
研究科長も共同研究者という構造的問題
調査委員会は研究科長の下に設置される。
その研究科長が、被調査者と共同研究者の関係にあった——この構造が、調査の独立性への疑問を生む。
- 小田氏がJIPペプチド論文を発表( 2021年 )
- JIP論文を根拠に公的研究費が配分される
- 当時の生命科学研究科長・井垣達吏氏がJIP関連研究で 約1億8千万円 の研究費を取得 (小田氏と共同研究者の関係)
- 井垣氏が研究科長として小田氏の教授昇進人事に関与する立場に
- 部局調査委員会も研究科の組織内で構成(iPS細胞研究所・医生物学研究所・生命科学研究科・神戸大・名古屋大の各教授)
大学の研究不正調査には形式上、外部委員が含まれる。
今回の部局調査委員会も神戸大学・名古屋大学からの外部委員を含む構成だった。
しかし、調査対象の論文が複数の組織に利益をもたらしている場合、形式上の外部委員が実質的な独立性を持てるかどうかは別の問題だ。
改ざんを小さく見せることが関係者全体の利益に資する構造があるとすれば、調査報告の信頼性そのものが問われることになる。
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制度の問題はさらに、告発者の保護という観点にも及ぶ。
公益通報者保護制度は機能したか
A氏は告発に際して、大学内の複数の相談窓口(
CiRA相談室・医生研教授
)を経由した後、京大公正調査監査室へ正式に通報した。
制度の手順に沿って動いた結果が、雇い止めだった
。
2022年改正 ・公益通報者保護法が事業者に課す主な義務と本件の対応を照合する。
- ✓ 通報窓口の設置と体制整備
- ✓ 通報者への不利益取扱いの禁止
- ✓ 通報者の特定につながる情報の守秘
- △ 通報後の調査・是正措置の実施(実効性の担保は課題として残る)
A氏のケースでは、 告発からわずか 約3ヶ月後 に雇い止めが実行されており、法が禁じる「不利益取扱い」に当たるかが問われるとの見方もある。
雇い止めの立証困難性
——一般論として雇い止めの理由が告発に起因するものかを立証することは実務上難しいとされており、大学側が告発以外の理由を示した場合には法的保護の適用が限定されることもある。
また、大学内の相談窓口に通報した場合、通報先の機関自体が被通報者と利益関係にある構造では、通報者の秘匿が実質的に守られにくいとの懸念も一般に指摘されている。
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今回の事例は、研究機関における公益通報制度の実効性を改めて問い直す契機になるとみられる。
まとめ
- JIP論文のFig.2A,Bに改ざんを認定も、大学は論文撤回でなく訂正申請にとどめた
- 告発者A氏:告発から約3ヶ月後に雇い止めを通知、調査委員会はハラスメントを認定せず
- 調査中の昇進:不正調査進行中に准教授から教授へ
- 複数の疑義(Fig.3・5・4)が公式認定されなかった経緯は未解明
- 昇進人事に関与した研究科長がJIP関連研究費約1億8千万円を取得していた構造
科学の自浄機能が問われるとき、告発者を守る制度が実質的に機能するかどうかが試され続ける。
よくある質問(FAQ)
Q1. 小田裕香子教授のJIP論文で不正と認定されたのはどの部分か?
調査委員会が公式に認定したのはFig.2A,Bの改ざんで、実験条件の思い込みによるものとされた。
Q2. 告発した研究員A氏はなぜ雇い止めになったのか?
告発から約3ヶ月後に雇い止めを通知された経緯は明らかになっていないが、告発後に不利益取扱いが起きたとみられる。
Q3. 研究科長の井垣達吏氏が問題視されているのはなぜか?
小田氏の教授昇進人事に関与した立場でありながら、小田氏との共同研究でJIP関連研究費約1億8千万円を取得していたとされるため。
Q4. JIP論文で公式認定されなかった疑義にはどんなものがあるか?
Fig.3F,G・Fig.5Eの捏造疑義とFig.4H,Iのマウス除外・行方不明を含む改ざん疑義が、内部資料で把握されていたとされる。
Q5. 大学の研究不正調査で独立性が損なわれるケースとはどういうものか?
調査委員会が研究科内に設置され、形式上の外部委員でも対象論文で利益を得ている場合、実質的独立性が損なわれうるとみられる。
📚 参考文献
リアルタイムニュースNAVI 編集部
reaitimenews.com
話題のニュースを「なぜ?」の視点で深掘りするニュースメディアです。法律・心理学・経済など専門分野の知識をもとに、報道だけではわからない背景や理由をわかりやすく解説しています。
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