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円安倒産、なぜ55%が卸売業に集中?アパレル25件の構造的理由

円安倒産が卸売業・アパレルに集中する構造を解説するアイキャッチ画像

| 読了時間:約8分

2022年6月から45カ月
毎月途切れることなく、円安を原因とする企業倒産が起きている。

帝国データバンクの調査によると、2025年度の「円安倒産」は69件に達した。
前年度の80件を上回り、過去10年で最多となる勢いだ。

とりわけ目を引くのが、倒産企業の業種の偏りである。
なぜ、円安倒産はある特定の業種に集中するのか。

その背景には、日本の衣料品産業が抱える構造的な弱点がある。



卸売業が過半数を占めた──2025年度「円安倒産」69件の中身

最多は製造業ではない。卸売業の38件で、全体の55.1%を占めた。

円安で倒産する企業と聞くと、鉄やプラスチックを海外から仕入れる工場をイメージしがちだ。
ところが製造業は10件で、全体の14.5%にとどまる。

製造業が最多実際は卸売業が4倍近い

📊 帝国データバンク調査(2026年3月3日発表)

2025年度(2026年2月まで)の円安倒産は69件
業種別では卸売業38件、小売業13件、製造業10件の順。

卸売業と小売業をあわせると51件。
全体の7割を超える。

ものを「作る」企業ではなく、海外から「仕入れて売る」企業が集中的に倒れている。


アパレル関連だけで25件

分野別に見ると、さらに偏りは鮮明になる。

繊維原料や衣料製品の輸入に頼るアパレル関連25件
69件のうち約36%をこの一分野が占めた。

業種 件数 割合
卸売業 38件 55.1%
小売業 13件 18.8%
製造業 10件 14.5%
その他 8件 11.6%
分野別(業種横断) 件数
繊維・アパレル関連 25件
飲食関連 8件
家具・建具関連 6件

この数字を時間に換算すると、ほぼ週に1〜2社のペースで円安を原因とする倒産が起きている。
しかも2022年6月以降、45カ月間一度も途切れていない。

⚠ 過去10年最多の可能性

2024年度の通期は80件だった。
2025年度はまだ1カ月(3月)を残しており、帝国データバンクは「過去10年で最多となる可能性もある」と指摘する。

卸売業、とりわけアパレル関連に倒産が集中する背景には、日本の衣料品産業が抱える構造的な問題がある。



なぜアパレルが狙い撃ちされるのか──輸入浸透率98.5%の死角

日本で売られている服の98.5%は海外製だ。

経済産業省の資料によると、衣料品の輸入浸透率ゆにゅうしんとうりつは数量ベースで98.5%(2022年時点)。
100着のうち、国内で作られているのは1〜2着にすぎない。

2024年にはさらに上昇し、98.6%を記録した。

💡 つまりどういうことか

アパレル業界は、売る服のほぼすべてを海外から仕入れている。
円安で輸入コストが上がれば、真っ先に直撃される産業構造になっている。

クローゼットにある服を思い浮かべてほしい。
そのほぼすべてが海外で縫われている。

円安が進むたびに、それを届ける企業の仕入れ値は跳ね上がる。


楽天SOY4位の人気店も破産した

帝国データバンクの調査では、具体的な倒産事例も報告されている。

レディースアパレルの企画・販売を手がけたズーティー(兵庫県神戸市)は、2025年4月に破産手続きに入った。
同社が運営していたECサイト「イーザッカマニアストアーズ」は、楽天のショップ・オブ・ザ・イヤー総合4位を獲得した実績を持つ。

📄 帝国データバンクによる分析

ズーティーはコロナ禍で売り上げが落ち込む中、2022年以降の円安基調で仕入れ価格が高騰。
さらにコロナ融資の返済負担が重荷となり、資金繰りが限界に達した。

奈良の靴下メーカー・三ッ星靴下も2025年12月に破産した。
過去の設備投資で膨らんだ有利子負債を抱えていたところに、円安による原材料高が追い打ちをかけた。

売れている企業でも、仕入れコストの上昇を吸収しきれなかった。



大企業は傘を持ち、中小企業は雨ざらし

円安の影響は、すべての企業に等しく降り注ぐわけではない。

東京商工リサーチのアンケート調査(2025年12月)では、1ドル=156円前後の為替が「マイナス」だと答えた企業が41.3%にのぼった。
小売業では55.7%、卸売業では53.0%が「マイナス」と回答している。

一方、「プラス」と答えた企業はわずか4.4%にとどまる。

円安がマイナス

41.3%

円安がプラス

わずか4.4%

区分 マイナス プラス
小売業 55.7%
卸売業 53.0%
大企業 41.8% 7.1%
中小企業 41.3% 4.1%

大企業は輸出で為替差益を得られる。
海外拠点からの利益を円に換算すると、円安はむしろ追い風になる。

ところが内需型の中小企業にはその恩恵がない。
仕入れコストだけが上がる。

さらに中小の卸売業は、サプライチェーンの「中間」に位置している。
海外から仕入れたものを国内の小売に卸すとき、仕入れ値の上昇をそのまま販売価格に乗せることが難しい。

取引先との力関係から価格転嫁かかくてんかが進まず、利益が削られていく構造だろう。

これだけ構造的な問題であれば、為替が動かない限り解消は難しい。
では、円安が収まる兆しはあるのか。



止まる兆しはあるか──企業が望むレートと「20円の溝」

帝国データバンクの見通しは明確だ。
「円安倒産は今後しばらく現状のペースで推移する」。

2026年3月3日時点の為替は1ドル=157円台で推移している。
イラン情勢の緊迫化にともなう有事のドル買いが加わり、158円を試す場面も出てきた。

📊 企業が望む為替レート

東京商工リサーチの調査(2025年12月)によると、国内企業が「適正」とする為替レートの平均は133.5円、中央値は135.0円
現在の157円台とは20円以上の開きがある。

1ドル=155円以上を「適正」と答えた企業は、わずか6.0%しかいない。
裏を返すと、94%の企業が「今の為替は高すぎる」と感じている。


「ホクホク」と「倒産」の距離

この乖離を象徴する出来事があった。

2026年1月31日、高市早苗首相は衆院選の応援演説で「円安で助かっている。外為特会の運用もホクホク状態だ」と発言した。
ロイター通信によると、多くの政府関係者にとっても想定外の発言であり、首相官邸は即座に火消しに回った。

政治と現場の温度差

首相が「ホクホク」と語った同じ円安のもとで、
中小企業の倒産は45カ月間、途切れることなく続いている。



「円安=輸出に有利」はもう古い

⚠️ ここからは推測を含みます

かつての日本は貿易黒字国だった。
自動車や電子部品を大量に輸出していた時代には、円安は日本経済全体の追い風になりえた。

しかしいまの日本は、エネルギーから衣料品まで輸入に頼る構造へ変わっている。
アパレルの輸入浸透率98.5%はその極端な例だ。

貿易赤字が常態化した国にとって、円安は恩恵よりもコスト増を広くもたらす要因になっているのではないだろうか。


円安倒産が特定の業種に集中し、しかも3年以上止まらないという事実は、日本の産業構造そのものが為替リスクに対して脆弱になっていることを映し出している。

133.5円という企業の「本音」と、157円という現実の溝が埋まらない限り、この流れが反転する見通しは立ちにくいだろう。



まとめ

  • 2025年度の円安倒産は69件。前年度(80件)を上回り、過去10年最多を更新する勢い
  • 最多は卸売業(38件、55.1%)。製造業ではなく「仕入れて売る」業態が直撃されている
  • アパレル関連だけで25件。衣料品の輸入浸透率98.5%という産業構造が背景にある
  • 企業が望む適正レートは133.5円。現実の157円台とは20円以上の乖離
  • 帝国データバンクは「今後しばらく現状のペースで推移する」と見通している

よくある質問(FAQ)

Q1. 円安倒産とは何ですか?

円安による輸入コスト上昇が直接・間接の原因となった倒産です。負債1000万円以上の法的整理が対象になります。

Q2. 2025年度の円安倒産は何件ですか?

2025年度(2026年2月まで)の累計で69件です。前年度80件を上回り、過去10年で最多となる可能性があります。

Q3. 円安倒産が最も多い業種はどこですか?

卸売業が38件で全体の55.1%を占め最多です。次いで小売業13件、製造業10件の順になっています。

Q4. なぜアパレル業界に円安倒産が集中しているのですか?

日本の衣料品の輸入浸透率は98.5%です。ほぼ全量を海外から仕入れるため、円安の影響を最も直接的に受けます。

Q5. 円安倒産はいつから増えていますか?

2022年6月以降、45カ月連続で発生しており、一度も途切れていません。

Q6. 企業が望む為替レートはいくらですか?

東京商工リサーチの調査で平均133.5円、中央値135.0円。現実の157円台とは20円以上の開きがあります。

Q7. 円安倒産は今後も増えますか?

帝国データバンクは「今後しばらく現状のペースで推移する」との見方を示しています。

Q8. 円安で得をしている企業はありますか?

東京商工リサーチの調査で円安が「プラス」と答えた企業はわずか4.4%。輸出関連の大企業が中心です。

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リアルタイムニュースNAVI 編集部

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